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活躍する卒業生 Vol.28

杉浦 朗さん

法学部 国際政治学科* 2011年3月卒業
*現在の国際コミュニティ学部国際政治学科
大成農材株式会社 代表取締役社長

学生時代の経験

在学中に特に印象に残っていることは、大学1年生の春休みに参加したスペインへの短期留学です。当時、第二外国語としてスペイン語を履修しており、家族からの後押しもあり留学に挑戦しました。「ヨーロッパだから、困ったときは英語で話せば何とかなるだろう」と気楽に考え始まったスペインでの生活は、苦労と衝撃の連続でした。ホームステイ先での過ごし方のルールや語学学校での授業は、もちろん全てスペイン語で話され最初は苦労しました。その中で、ヨーロッパ各国から集まった同世代の学生たちと交流するうちに、私自身が日本や広島のことをよく知らないということに気づきました。異文化理解を進めるためには、まずは自国のことを知る必要があり、現地で過ごすための語学力を含め「学ぶことの大切さ」を初めて理解した経験だったと思います。

3代目社長への就任

私が3代目社長を務めている大成農材株式会社は、自社製の天然有機肥料をはじめ、除草剤、農産品を扱う農業関連メーカーです。母方の祖父が創業した会社で、今年創業40周年になります。創業当時から、安全とおいしさにこだわりを持つ農家さんやご家庭に「農」を通して豊かなくらしを届けるために、安心・安全な有機肥料へのこだわりを追求してきました。大学卒業後は他社に入社し千葉県で営業をしていた私が家業を継ぐことになったのは、先代社長である父から「帰ってきて仕事を手伝ってくれないか」と電話で伝えられたことがきっかけでした。突然の知らせで悩みましたが、創業当時からの祖父の一貫した有機肥料への想いを受け継ぐことに決めました。

社長就任後の苦悩と成功

入社して3年目、社長就任時29歳と、あまりに短い期間で社長に就任したこともあり、当初は苦労する時期が続きました。入社当初は、暗くて活気のない会社だなという印象が強く、主体的で活発な動きが少ないと感じていました。また、社員との距離感が難しい時期もありました。しかし、社長になったからには良い会社にしたいという思いから、社内環境とワークライフバランスを重視した施策を推進。福利厚生の充実にも力を入れました。具体的には、定時退社の推奨や、オーバーワークにならないようなマネジメントの徹底、禁煙手当(非喫煙者にボーナスを上乗せ)など独自の取り組みを進めています。その結果、本社社員の離職率は7年連続0%(定年前の早期退職者を除く)を継続しています。新ブランド「ひりょうやさんのトマト」の立ち上げ祖父の趣味で始めたトマトづくりを事業化したのは、私が社長に就任してからです。肥料屋である私たちが、安心・安全なおいしさにこだわり、研究開発を重ねてきた有機肥料を使って、自分たちが本当においしいと誇れるトマトを作り、ブランド化しました。それまでBtoBの事業を主としていましたが、消費者の方に商品を直接届けることができるようになり、「美味しい」という声をいただく機会が増えるにつれ、私も社員も非常に嬉しく感じています。また、専門家(農家)ではない私たちが、おいしいトマトを作ることは、有機肥料に効果があるという何よりの宣伝になると考えています。今後も販路を拡げていく予定です。

私のストレス解消法と広島の活性化への願い

私のストレスの解消法は、スポーツ観戦です。街なかに移設されてアクセスの良くなったエディオンピースウィングスタジアムでのサッカー観戦や、天候に関係なく楽しむことができるバスケットボールの観戦に子供と一緒に行くことが息抜きになっています。また、御縁があって、会社としても広島ドラゴンフライズのスポンサーをしています。新たなアリーナができれば、さらに広島の街に活気が出ると思い応援しています。人口の転出超過がワースト1位の広島ですが、広島の魅力の一つであるスポーツが盛り上がることで、広島の活性化や、若者が住みたいと思えるような街づくりにつながると考えています。同時に、若者が働きたいと思えるような会社経営をしていくことが一番の恩返しだと思い、日々仕事に向き合っています。

農業界と私たちの今後に向けて

昨今の天候不順(高温、極端な乾燥や極端な豪雨)などで、今後は野菜も果物も栽培が難しくなっていきます。そんな環境だからこそ、植物がもつ本来の免疫や生命力を最大限引き出して栽培をする必要があります。そのためには良質な有機肥料が必要不可欠と考えています。今後は、持続可能な農業、若い人が働きたくなる農業をめざして、肥料製造だけでなく野菜の栽培にも力を入れていきます。農業界に限らず、社会では自分の専門分野やこれまで携わってきた業務外の仕事に直面することが多くあります。学生の皆さんは、ぜひ柔軟な思考を持ちながら、自分の枠を越えて未知の世界へと一歩踏み出してみてください。想像もしなかった出会いや経験が、将来のあなたを形づくる礎になるはずです。
※掲載内容は全て取材当時(2025年)の情報です。