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健康科学部 山内有信先生

食べ物に含まれる機能性成分ってすごい?!

健康科学部教授 山内 有信(やまうち ありのぶ)先生

愛媛大学連合大学院農学研究科論文博士取得 博士(農学)
専門分野:食品科学、栄養生理・生化学、応用健康科学
主要研究テーマ:健康茶の生活習慣病予防効果の検証、核酸高含有玄米発酵抽出物の健康維持・増進への可能性の検討

食品中には、生きていくために必要不可欠な栄養素はもちろん、栄養素としては位置づけられていない健康の維持・増進に貢献するさまざまな成分(機能性成分)が含まれています。その代表例が、特定保健用食品、いわゆる“トクホ”として広く知られている食品における関与成分である食物繊維やポリフェノール類などです。このような機能性成分として期待されるものの一つに核酸があります。
日本は、狭い気候帯の中で四方海に囲まれた国であり、朝鮮半島へ渡るにしても、その中継点である対馬まで約130km離れていることから、飢饉が発生しても大陸へ食を求めて渡ることは容易ではありませんでした。そのため、日本人は倹約遺伝子といわれる遺伝子多型を持った者が飢餓に耐えて生き残った子孫といえます。この倹約遺伝子多型の中には、糖尿病になりやすい変異をした遺伝子多型が20種類以上発見されています。これが、欧米人と比較して日本人では糖尿病を発症しやすい理由と考えられています。

研究の様子

ところで,核酸・核酸関連物質の代表には、遺伝・たんぱく質合成を司るDNAとRNAがあります。DNA・RNAを構成する核酸塩基は、体内で他の物質から合成することが可能ですが、それだけでは不十分で、食事により核酸塩基を補充摂取する必要があります。実験では、この核酸(とくにRNA)を日本酒醸造に使われる黒麹による発酵で増幅させた玄米発酵抽出物を実験動物に摂取させた実験で、食後血糖値の上昇抑制と、血糖の細胞内取り込み促進・グリコーゲン合成促進・糖からの脂肪合成促進などで血糖値を低下させる唯一のホルモンであるインスリン分泌の節約効果によって糖尿病の発症を予防できる可能性があることを見出しました。ただ、実験動物とヒトでは必ずしも同じ生理効果が得られるとは限りません。そこで、現在は、ヒトでも同様の効果が期待できるかについての研究に取り掛かっています。直近の研究では、健康な大学生を被験者とした経口糖負荷試験によって急性・短期的効果として食後血糖値の上昇を抑制することを確認し、論文として発表しました。今後は中長期的な継続摂取による空腹時血糖値の適正化に対する効果に関する研究を進めます。
また、血糖値の上昇を抑制するメカニズムの一つに、糖質が吸収される過程に関わる糖類分解酵素の活性を抑制するものがあります。例えば、特定保健用食品として市販されているグァバ葉抽出茶などがその代表です。核酸高含有玄米発酵抽出物において糖類分解酵素の活性抑制効果が期待できることはすでに論文発表していますが、関連研究として、体脂肪燃焼促進効果で特定保健用食品の関与成分として認められている緑茶カテキンにも同様の効果が期待できることを見出し、2021年にその研究内容が民放全国ネットの情報バラエティー番組で取り上げられました。カテキンによる糖類分解酵素活性抑制の様式の研究とともに、その他類似の効果が期待できる成分の検索も計画しています。
※掲載内容は全て取材当時(2023年3月)の情報です。