物語に描かれるアフリカ系アメリカ人の苦悩

文学部 准教授 西光 希翔(ニシミツ キショウ)先生
関西学院大学 文学研究科博士課程後期課程 文学言語学専攻英米文学言語学領域 博士(文学)
専門分野: アメリカ文学
主要研究テーマ: 物語に描かれるアフリカ系アメリカ人の苦悩
人間は物語を好む生き物です。落語や講談といった物語形式の文化が長く愛されているのは、その証拠ではないかと思います。噂話や都市伝説、あるいは漫才なども物語の一種と言っていいかもしれません。物語は私たちの生活に深く根差しています。
では作る側は、物語を使って何がしたいのか、文学作品に焦点を当てて考えてみましょう。文学は暗いイメージがあります。実際、中学校や高校の国語の授業で読んだ作品は暗い物語だったと記憶しています。文学に暗い物語が多いのは、いろいろな理由があるかと思います。一つには、文学が心にある苦しみや悩みを表現する媒介だからではないでしょうか。悩みを抱えているとき、誰かに話して気持ちが楽になることはよくあります。あるいはSNSやブログなどで心のうちを吐露したくなった経験がある方もいるでしょう。文学も似ていると思います。文学とは言葉や物語を介し、作者が自身の内側にある何かを表現したものなのです。
では作る側は、物語を使って何がしたいのか、文学作品に焦点を当てて考えてみましょう。文学は暗いイメージがあります。実際、中学校や高校の国語の授業で読んだ作品は暗い物語だったと記憶しています。文学に暗い物語が多いのは、いろいろな理由があるかと思います。一つには、文学が心にある苦しみや悩みを表現する媒介だからではないでしょうか。悩みを抱えているとき、誰かに話して気持ちが楽になることはよくあります。あるいはSNSやブログなどで心のうちを吐露したくなった経験がある方もいるでしょう。文学も似ていると思います。文学とは言葉や物語を介し、作者が自身の内側にある何かを表現したものなのです。

文学に作者の心が表現されているとするならば、差別を経験し抑圧を受けてきた人々は、どのような物語を生み出してきたのでしょうか。この問題意識が私の研究の原点です。私はアメリカ文学 、特にアフリカ系アメリカ人の文学を中心に研究しています。アメリカの企業が提供する先端的なサービスや商品を私たちは日常的に利用しています。留学先としても、アメリカは人気です。そんな最先端の国アメリカですが、その歴史には差別や抑圧が散見します。その大きなものの一つが人種差別です。かつて奴隷として扱われてきたアフリカ系アメリカ人たちは、長い年月にわたり、悲惨な人種差別を強いられてきました。南北戦争を契機に奴隷制という制度自体は消滅しましたが、人種差別は残り、場合によってはより辛辣になっていきました。現代でも、人種差別はアメリカにおいて大きな問題となっています。Black Lives Matterという言葉を皆さんも耳にしたことがあるかと思います。
差別の歴史を背負ったアフリカ系アメリカ人の文学には、差別への抵抗と自由の希求が色濃く描かれています。奴隷制が存在した19世紀には、奴隷体験記と呼ばれるジャンルが誕生しました。これは実際に奴隷であった人々の体験を綴る物語です。20世紀になると、人種差別に抵抗を示す抗議小説が隆盛します。アフリカ系アメリカ人は物語という媒介を使い、差別が蔓延する社会を描きながら、自身の心のうちを表現してきました。アフリカ系アメリカ人の文学は、単なる物語ではなく、苦しみや葛藤を抱えた人々の声です。文学研究を通して、人間や社会の姿を追究していきたいと思っています。
差別の歴史を背負ったアフリカ系アメリカ人の文学には、差別への抵抗と自由の希求が色濃く描かれています。奴隷制が存在した19世紀には、奴隷体験記と呼ばれるジャンルが誕生しました。これは実際に奴隷であった人々の体験を綴る物語です。20世紀になると、人種差別に抵抗を示す抗議小説が隆盛します。アフリカ系アメリカ人は物語という媒介を使い、差別が蔓延する社会を描きながら、自身の心のうちを表現してきました。アフリカ系アメリカ人の文学は、単なる物語ではなく、苦しみや葛藤を抱えた人々の声です。文学研究を通して、人間や社会の姿を追究していきたいと思っています。