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人文学部 永田成文先生

持続可能な社会の創り手を育むESD授業

人文学部教授 永田 成文(ながた しげふみ)先生

広島大学 学校教育研究科 修了
博士(教育学)
専門分野:社会科教育学
主要研究テーマ:ESDとしての地理授業 異文化理解教育

小学校・中学校の社会科、高等学校の地理歴史科・公民科(以降「社会系教科」と表記)の目標は、社会認識を通して公民的資質(現行学習指導要領では公民としての資質・能力と表記)を育成することです。専門分野である社会科教育学は、社会系教科のカリキュラムや単元や1時間のスパンにおいて、どのような目標、内容、方法を設定した授業を構想、実践しているのか、学習者の社会認識の形成がなされているのか、学習者の公民的資質の育成がなされているのかなどについて分析していきます。研究では、持続可能な開発のための教育(ESD : Education for Sustainable Development)としての社会系教科教育の在り方をテーマとしています。
ESDは、「持続可能性」の価値観から、現代世界の諸地域に表出する諸課題の解決に向けて、学習者が主体的に探究活動を行い、学習者の行動の変革を促すことを究極目標としています。ESDは学習者の持続可能な社会の構築に向けた社会参画を促すことになるため、よりよい社会を形成することを目指す社会系教科の究極目標である公民的資質の育成と大きくかかわります。社会系教科の授業がESDとなるためには、現代世界においてその持続可能性が問題となっている異文化理解や地球的課題などを取り上げ、学習者が現状を把握し、その要因を考察する社会認識の過程と、持続可能性の視点からそれらの解決に向けて構想する社会参加の過程を踏まえて主体的に探究することが求められます。
主に社会系教科に属する地理を対象として、オーストラリアなどのESDの視点を取り入れた先進的な地理授業のカリキュラムや単元を分析し、日本の地理授業がESDとなるための示唆を得る研究を行っています。また、日本の地理授業のカリキュラムを前提に、異文化理解や地球的課題など現代世界の諸課題を教材として取り上げ、社会認識と社会参加による探究過程を組み込んで学習者の行動の変革を促すようなESDとしての地理授業を開発するという実践研究を行っています。
これらの研究を踏まえ、大学の教職課程に位置づけられる社会系教科の教科教育法において、ESDとしての社会系教科の授業を推進する意義や特色、授業の進め方を取り上げています。
筆者のESDにかかわる教育研究活動を代表する主要著書は次の二つです。
永田成文『市民性を育成する地理授業の開発-「社会的論争問題学習」を視点として-』風間書房,2013.2(単著)
永田成文編『エネルギーの観点を導入したESDとしての社会科教育の授業づくり』三重大学出版会,2022.3.3(編著)
また、教育現場の社会系教科において、ESDがさらに普及していくために、具体的に学習者の行動の変革がイメージしやすい持続可能な開発目標(SDGs)を取り上げています。例えば、日本文教出版広報誌の社会科NAVIにおいて、SDGsにかかわる活動が、持続可能な社会の構築に向けて実際の社会の中でどのように実践されており、それらの活動を社会系教科の授業の教材として、どの学年のどの単元でどのように取り上げていくのかについて解説、発信しています。

オーストラリア ウルルの観光資源調査(2017年)

オーストラリア リベリナ地区の米栽培調査(2023年)

※掲載内容は全て取材当時(2023年3月)の情報です。