労働や雇用の現代的変容によって生じる"生きにくさ"を社会問題として提示する
カスハラ(カスタマー・ハラスメント)が問題とされ、企業などによる対応が話題になっています。しかしながら、元を正せば、企業などの雇用者側が労働者に対して、「雇用の継続」を盾として理不尽な要求や劣悪な労働条件を当然のように強いていることが問題なのではないでしょうか。もし労働者が、横柄な態度で無理難題を要求する顧客に対して「まともに応対する必要がない」といった至極当然の対応をできる条件で働けているならば、カスハラは大幅に減少するでしょうし、お行儀の悪い顧客はモノを買ったりサービスを受けたりすることが難しくなるといった当然の仕打ちを受けるでしょう。つまり、雇用が不安定になり、企業などの雇用者側が理不尽な労働条件を労働者に強いるのは当然だという社会の風潮こそが問題なのです。
私はこれまで、労働や雇用の現代的変容によって生じる〝生きにくさ〟に関心を抱き、それらを社会問題として提示するために研究を行ってきました。これまでの研究は、研究方法によって3つにわけることができます。
1つ目は、ある状況が社会問題化されていくのに大きな役割を果たしている、マス・メディアによる報道のドキュメント(記録)の分析です。「フリーター」「ニート」といった若者の就業問題を指し示す言葉(カテゴリー)が登場し、社会政策的な問題から次第に社会的弱者の問題へ、さらには自己責任化されていくといったように、社会問題がつくられていく過程を明らかにしてきました。
2つ目は、社会問題の当事者とされる人たちによってつくられている集まりや集団における参与観察調査*や聞き取り調査を用いた研究です。具体的には、ジョブカフェ(行政によって設置された若者の就業支援を行う施設)を介して自発的な集まりを形成する若者のグループや、個人で入れる労働組合(コミュニティ・ユニオン)に集う女性たちの活動や労働運動におけるフィールドワークを通じて、社会問題の当事者とされる人たちの在り様と彼ら/彼女らが直面している困難や問題を社会的な問題として明らかにしてきました。
3つ目は、社会問題の当事者とされる人たちや労働運動に関わる人たちに対するインタビュー調査を用いた研究です。具体的には、不安定な就業状況にある人たちやコミュニティ・ユニオンにかかわる人たちへの聞き取りによって、彼ら/彼女 らが直面している困難を自己責任として帰着させてしまう"生きにくさ"を個人化社会の問題として提示してきました。
これらの研究を通じて、労働や雇用の現代的変容によって"生きにくさ"を抱えている人たちの経験を、主にジェンダーや世代に焦点をあてて、彼女/彼ら個人の責任に帰するのではなく「社会問題として捉えるべき」だと提示することを試みてきました。
今後は、フリーランスとして働く人たちに注目し、彼女/彼らが抱える"生きにくさ"や困難に加えて、彼女/彼らがどのようにして生活を成り立たせているのかについてみていくことにより、これまでに引き続き、労働や雇用の現代的変容によって生じる"生きにくさ"を社会問題として捉えていきたいと考えています。また、日本だけではなく、東アジアにおける女性たちの社会運動を視野に、現代社会を考察していくことを通じて、女性の多様な生き方を模索していきたいと考えています。
*参与観察調査…調査対象とする集まりに関わり(=参与)ながら、同時に観察も行う調査方法。
私はこれまで、労働や雇用の現代的変容によって生じる〝生きにくさ〟に関心を抱き、それらを社会問題として提示するために研究を行ってきました。これまでの研究は、研究方法によって3つにわけることができます。
1つ目は、ある状況が社会問題化されていくのに大きな役割を果たしている、マス・メディアによる報道のドキュメント(記録)の分析です。「フリーター」「ニート」といった若者の就業問題を指し示す言葉(カテゴリー)が登場し、社会政策的な問題から次第に社会的弱者の問題へ、さらには自己責任化されていくといったように、社会問題がつくられていく過程を明らかにしてきました。
2つ目は、社会問題の当事者とされる人たちによってつくられている集まりや集団における参与観察調査*や聞き取り調査を用いた研究です。具体的には、ジョブカフェ(行政によって設置された若者の就業支援を行う施設)を介して自発的な集まりを形成する若者のグループや、個人で入れる労働組合(コミュニティ・ユニオン)に集う女性たちの活動や労働運動におけるフィールドワークを通じて、社会問題の当事者とされる人たちの在り様と彼ら/彼女らが直面している困難や問題を社会的な問題として明らかにしてきました。
3つ目は、社会問題の当事者とされる人たちや労働運動に関わる人たちに対するインタビュー調査を用いた研究です。具体的には、不安定な就業状況にある人たちやコミュニティ・ユニオンにかかわる人たちへの聞き取りによって、彼ら/彼女 らが直面している困難を自己責任として帰着させてしまう"生きにくさ"を個人化社会の問題として提示してきました。
これらの研究を通じて、労働や雇用の現代的変容によって"生きにくさ"を抱えている人たちの経験を、主にジェンダーや世代に焦点をあてて、彼女/彼ら個人の責任に帰するのではなく「社会問題として捉えるべき」だと提示することを試みてきました。
今後は、フリーランスとして働く人たちに注目し、彼女/彼らが抱える"生きにくさ"や困難に加えて、彼女/彼らがどのようにして生活を成り立たせているのかについてみていくことにより、これまでに引き続き、労働や雇用の現代的変容によって生じる"生きにくさ"を社会問題として捉えていきたいと考えています。また、日本だけではなく、東アジアにおける女性たちの社会運動を視野に、現代社会を考察していくことを通じて、女性の多様な生き方を模索していきたいと考えています。
*参与観察調査…調査対象とする集まりに関わり(=参与)ながら、同時に観察も行う調査方法。
※掲載内容は全て取材当時(2024年)の情報です。