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経済科学部 出木原 裕順先生

研究室の扉

ネットワークと情報技術

経済科学部 出木原 裕順(できはら ひろゆき)先生

ようこそ、わたしの研究室へ

研究室の様子

皆さんは生活のなかで、どのくらいネットワークを利用したり、情報技術の恩恵を受けたりしているでしょうか。生まれたときから身のまわりにインターネットやパソコンがある世代をデジタルネイティブと呼んだりもしますが、これを読んでいる人の多くはデジタルネイティブ世代なのではないかと思います。皆さんのまわりを見渡してみても分かるように、私たちの生活は、インターネットなどのネットワークと、スマートフォンやパソコンなどのネットワークに接続できる情報機器に支えられており、ネットワークは社会基盤の1つになったと言っても過言ではありません。私の主な研究分野としては、ネットワークを基盤とする情報システムに関連するものとして「多次元データ構造」と「情報システム」の2つを、それ以外として「情報教育」を挙げることができます。

研究について

私はもともと3次元空間中で時間経過とともに移動・変化する物体や事象を管理する手法について研究していました。今で言うスマートフォンや自動車両、ドローン、ロボットなどをイメージしてみると分かりやすいかもしれません。3次元空間軸と時間軸を基本とし、場合によってはそれ以外の情報軸も組み合わせて、時空間や多次元に基づいたデータのグループ化(データ構造)や、管理する手順(アルゴリズム)を新しく考案し、ネットワーク環境下での運用を想定してそれらのデータ群をいかに効率よく管理するかということを「管理する側」から研究していました。研究では、自身のアイディアをプログラミングして実装し、数値実験やシミュレーション実験を行って最新の手法や従来法と比較して、その有用性を評価していきます。これが前述した「多次元データ構造」に関する研究になります。
そのような研究をしていましたが、情報技術の発展や蓄電装置の小型化、無線技術の普及などにより、スマートフォンやドローンなどの「管理される側」の情報機器が高機能化していき、できることが増えていきました。それに伴って研究対象が管理する側から管理される側であるネットワーク端末の機器にも拡がっていきました。現在、いわゆるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)やエッジコンピューティング(エッジとはネットワークの終端装置を指す)と呼ばれている分野になります。別の言葉で言うと、ネットワークを利用する多種多様な情報システムに関する研究になるかと思いますが、前述した「情報システム」に関する研究がこれに該当します。この分野は、常に最新技術が導入されている分野であり、私自身も日々勉強しながら研究を進めています。最近のもので言うと、複数のネットワーク経路を利用するIoTの安全な通信方式やデータ管理方式に関する研究や、機械学習(いわゆる人工知能)を利用した人の動きを認識して活用する情報システムに関する研究などを行っています。

実験風景

写真は後者の研究の実験風景です。パソコンを利用している被験者の顔の表情や手指の動きを機械学習に基づいた機能で自動認識して追跡し、電子データ化するシステムの開発中の試作機になります。情報機器の評価や、リモート作業中の作業者および遠隔授業中の学習者などの動態観測システムなどへの応用を想定しています。この研究は、大阪工業大学の先生を研究代表者として、豊橋創造大学や広島国際大学などの先生達と一緒に分担研究者の一員として進めています。このように異なる分野の先生達と一緒に研究することは、私にとって非常に刺激的な研究活動になります。その他として、最近では情報教育に関する研究にも取り組んでいます。e-Learningのシステムを開発したり、教育コンテンツを開発したり、ハイブリットな遠隔授業を試験的に試したり、多様なアプローチで研究を行っています。特に、第四次産業革命の技術革新に数えられるIoTや人工知能に関連した情報技術の教育に注目しています。第一次産業革命の蒸気機関、第二次産業革命の電力、第三次産業革命の情報通信技術のように、IoTや人工知能は、世の中を変え得る技術革新と して期待されています。しかしながら、IoTや人工知能は新しい技術であり、まだまだ体系化されていないため、手探りで学習しているのが現状であり、この課題に共同研究者達と一緒に取り組んでいました。

ゼミナールについて

これまで述べてきたように、私の研究分野は色々な分野に関連した複合領域であり、その範囲は比較的広いものになっています。したがって、私のゼミナールで は、インターネットやネットワークを利用する情報システムに関連するものや、その環境下で発生する事象であれば、学生自身が興味関心のあるものを比較的柔軟に卒業研究の研究テーマとして採用しています。2021年度の4年生は 、機械学習を応用したWebページの自動配色システムやテコンドーの型の認識システム、COVID-19の影響下におけるオンライン美容カウンセリングの実態調査、療育へ情報技術を応用する可能性など、多種多様なテーマを学生自身が考えて選定し主体的に研究を進めてきました。写真はそんな学生達の卒業研究から抜粋した資料になります。一つ目は機械学習を利用したペットの動態を観察するシステムの実験風景の写真です。学生自身のペットであるヒョウモントカゲモドキの飼育を支援するシステムを開発したいという思いが研究の動機づけにあります。また、二つ目はCOVID-19の影響下におけるアーティストのSNS情報をテキストマイニングした結果の1つになります。こちらも学生が応援するアーティストの活動を深く知りたいという思いが研究の動機づけになっています。

動態を観察するシステムの実験風景

アーティストのSNS情報をテキストマイニングした結果
※UserLocalテキストマイニングで分析

おわりに

私自身が考える研究活動で大切にしたいものとして、知的な好奇心や探求心といった研究への情熱を挙げることができると思います。私自身、興味関心があるテーマに挑戦してきた結果として、研究の幅が拡がっていきました。今後もネットワークと情報技術を組み合わせた研究に取り組んでいくと思いますが、ゼミナールの学生達にも、自分 の 情 熱を傾 けることができる研究テーマに取り組んで、積極的に研究活動を行って自己研鑽してほしいと考えています。 

プロフィール

経済科学部/ 出木原 裕順(できはら ひろゆき)教授
広島市立大学大学院 情報科学研究科 情報科学専攻博士後期課程修了 博士(情報工学)

▽専門分野
多次元データ構造、情報システム、情報教育
▽主な研究テーマ
多次元データ構造、情報システム、実習教材の開発とその応用

※掲載内容は全て取材当時の情報です。