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健康科学部 児玉 恵美先生

研究室の扉

「こころの不思議」を語る

健康科学部心理学科 児玉 恵美(こだま えみ)先生

ようこそ、わたしの研究室へ

こんにちは。私は臨床心理学を専門としています。臨床心理学は、心理学の知識を用いて心の問題を理解し、心理援助の理論や技法を研究して実践するための学問です。これまで、大学で研究や教育に携わりながら、精神科の病院やクリニックなどでも臨床活動を行ってきました。大学で授業を担当するとともに、大学院では、将来、心の専門家として活躍が期待されている大学院生の授業や実習指導を担当しています。

こころの不思議

銀杏並木の風景

(ハーモニーロード)

「金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に」(与謝野晶子)
確か小学3年生の頃だったと思います。国語の授業でこの短歌をはじめて知ったその瞬間、目の前にパーッと金色の世界が広がり、なんとも言えない温かくて懐かしい気持ちに浸ったことを今でも鮮明に覚えています。以来この金色の銀杏のイメージは、ふとした時に心の中に現れては励まし安心させてくれる、私にとって大事な風景となりました。
同じ瞬間にこの歌を学んだ教室の中で、このような体験をしたのはおそらく私だけであり、他のクラスメイトたちが感じたことや思ったことは一人一人異なります。物理的に同じ刺激を受けても、人によって感じ方や捉え方、影響を受ける強さや期間が異なるとはどういうことなのでしょうか。この個人による体験の違いには、興味や関心、これまでの経験、記憶、物事の捉え方、性格などさまざまなことが関係しています。そして、同じ個人であっても、気分や状況によって感じ方や体験の仕方が異なることがあります。たとえば、毎日見ているお馴染みの風景でも、嬉しいことがあったときには、いつも以上に木漏れ日がキラキラ輝いているように感じ、辛いことがあったときには、地面にできた木の陰の濃さをより強く感じるかもしれません。同じ風景が、昨日と今日とで違って見えることがあります。このようなことが、私はとても不思議だなと思うのです。

こころを映すもの

一人一人異なる心の様相や、同じ個人であっても気分や状況によって異なる心の状態について、どのように把握して理解することができるのでしょうか。
いくつかある心理検査法の中の一つに投映法があります。これは、多義的な意味を持つ曖昧な刺激を提示し、それに対して自由に反応してもらうことにより、その個人の内にある関心、感情、欲求や認知傾向などを把握して、その人個人を理解しようとする方法です。たとえば、空に浮かんでいる雲を見たとき、何の形に見えるでしょうか?

あるいは夜、寝床についた時に、木目が人の顔や目に見えたことがありますか?そこにも、私たちの興味・関心やその時の気持ちなどが反映されているかもしれません。この投映法には、図版を用いるロールシャッハ・テストや、絵を描いてもらう描画テストなどが含まれます。私はこの投映法を用いて、パーソナリティのある側面との関係を調査したり、個人をより多面的に深く理解するための方法や、心理療法過程における心の変化を把握する試みに関する研究を行っています。
さらに、外界からの刺激の入りやすさや影響の受けやすさ、意識と無意識の繋がり方などにも興味があり、それらと精神病理的な症状や特徴との関係、芸術家における創造性との関係についても研究を行っています。

教育での取り組み

大学院の授業風景

3年生から始まるゼミでは、現在は心理療法における主に非言語的な方法として、芸術療法や表現療法を実際に体験しながら学ぶ実習を展開しています。 また、卒業論文作成に向けて、各々の興味に沿って研究テーマを決め、どのような方法が適しているかなど全体で検討しながら進めていきま す。ゼミでは、質問や発言がしやすく、どのようなことでもみんなで興味を持って、学生同士が協力して取り組める雰囲気作りを心がけています。学生の意見や発想は私にとっても大きな刺激となります。また、大学院では、実践的に学ぶことのできる本学の臨床心理相談センターにて、心理療法の基礎や心理検査を習得するための実習などを担当し、次世代の公認心理師や臨床心理士の育成に携わっています。

ゼミナールの授業風景

プロフィール

健康科学部心理学科/児玉 恵美(こだま えみ)教授
九州大学大学院 人間環境学府人間共生システム専攻 心理臨床学コース博士後期課程単位取得後 退学

▽専門分野
臨床心理学

 ※掲載内容は全て取材当時の情報です。