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国際コミュニティ学部 王偉彬先生

中国の政治外交から見る国際政治

国際コミュニティ学部教授 王 偉彬(おう いひん)先生

京都大学大学院 人間・環境学研究科 国際政治専攻博士後期課程修了
博士(人間・環境学)
専門分野:国際政治、比較文明論
主要研究テーマ:中国の政治外交、戦後の日中関係

子どもの時から国際問題をたびたび不思議に思っていました。
中国は1950年代に「連ソ反米」(ソ連と連携し米国に反対する)でしたが、60年代には「反米反ソ」に転換したと小学校で教わりました。が、中学校の時、中国は「連米抗ソ」の戦略に転換。それまで朝鮮戦争やベトナム戦争で「米帝国主義」と戦った中国がいきなりアメリカと接近するという180度の方向転換に驚きました。さらに約1年後には、「抗日戦争」(日中戦争)で被害を受けた中国が、これからは日本の経済発展の経験を学び、西側諸国との交流を図ると知りまた驚きました。
国際問題への関心が強まり、大学で外国語学部日本語学科、大学院で国際政治専攻という専門を選択。それから、米中、日中、中ロ関係は大きく変わり、東アジアの国際政治も様変わりしました。私も国際政治の変更に驚いた少年から国際政治を中心に研究する仕事に従事。謎だらけ、奥深い国際政治という学問に取り組んでいます。
専門は主に戦後中国の政治外交、日中関係・米中関係を中心としたアジアの国際政治です。
研究は、戦後中国の対米、対ソ(及び現ロシア)外交戦略の変遷を課題にしています。中国は、1950年代から「連ソ反米」、「反米反ソ」、「連米抗ソ」、「独立外交」及び「韜光養晦」へと外交戦略をたびたび変更しましたが、21世紀に入ってから、はっきりした外交戦略を示さず、「韜光養晦」の柔軟路線を継続するか強硬外交路線に踏み切るかという外交の「迷走」を続けています。現在は、この中国外交戦略の変遷と迷走の要因を研究しています。
一方、米中関係は対立し複雑化していますが、歴史から見れば、両国関係は友好と対立の交替状態にあると言えるでしょう。戦前、米中は協力して日本と戦いましたが、戦後、朝鮮戦争やベトナム戦争で米中両国は敵となり対戦。1970年代以後に両国連携でソ連に対抗しましたが、80年代から台湾問題をめぐり両国は再び対立するようになりました。2000年代はテロ対策、北朝鮮の核問題等でまた協力するも、近年になって「米中貿易戦争」や「中国包囲網」などで対立するようになっています。
中国と日本との関係も同様です。戦前、日中戦争という歴史がありましたが、戦後、1950-60年代は「政経分離」(政治関係を持たず、経済関係を持つ)の時代、1970-90年代は友好と協力の時代、2000年代は「政冷経熱」の時代、近年は「中国牽制」の時代になっています。
中国と日本・アメリカとの関係についての研究が東アジア及び世界全体の国際政治への理解に有益・不可欠であると考えています。

※掲載内容は全て取材当時(2023年3月)の情報です。