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商学部 徐康勲先生

企業のマーケティング戦略と消費者側の認識について

商学部准教授 徐 康勲(ソ カンフン)先生

神戸大学 大学院経営学研究科 博士後期課程修了
博士(経営学)
専門分野:マーケティング、国際マーケティング、マーケティング戦略
主要研究テーマ:企業の国際マーケティング諸活動・戦略研究、消費者の認識・行動研究

マーケティングとは

マーケティングの概念は、顧客満足を得るための売るという行為に関わるすべての企業の取り組みやプロセスのことです。また、売り手と買い手両方を重視するのがマーケティングの基本原理だと考えられています。私はマーケティングにおける企業側の戦略と消費者側の認識、あるいは両社の接点に関する研究をしています。

企業戦略と消費者の認識

私は、マーケティングの総合的な流れの中で、そもそも企業がどのようなミッションを持ち、どのような到達目標を立て、商品・サービス、ブランド、業績等で競争優位(他社に比べ優位に立つこと)を生み出しているかに興味を持ちました。まず、企業ミッションとCEOメッセージなどの内容を分析し、企業の業績との関係を探ることから始めました。しかし、近年の急激な事業環境変化や顧客需要の多角化から単独で事業を行うための十分なリソースを持っている企業は多くはなく、企業はさまざまな形で他の企業と協力して事業を進めています。このため、企業間の戦略的提携による影響についても幅を広げ研究をしています。

また、企業側の動きに対する消費者側の認識と反応も重要であると考え、特に、サービス産業における消費者の口コミ分析により、消費者の認識、感情、満足要因、不満足要因、ブランドイメージについて研究してきました。例えばホテル利用客の認識の国際比較、格安航空会社乗客の満足要因、乗客から見た各国際航空連盟の違いと感情分析に関する研究などがあります。

Global airline alliance

各国際航空連盟の競争優位の比較

前述した企業間の戦略的提携は、近年、エアラインサービス産業においても、頻繁に結ばれています。これは、厳しい規制を回避しながら、特定路線における航空会社の影響力の拡大を担う戦略的目的に起因します。また、海外企業との協力は、国際線の乗客に対するサービスのシームレス化など、サービスや企業ブランドの向上も期待され、global airline alliance(以下、「国際航空連合」という。)は航空会社のマーケテイング戦略の1つのツールでもあります。現在、航空会社の国際的な戦略的提携である国際航空連合にはStar Alliance、Sky Team、oneworldの3つがあり、世界の約6割以上の航空会社が参加しています。

国際航空連合への参加による航空会社に与える影響や、それぞれの国際航空連合がどのような競争優位を持っているかなど、長年、さまざまな研究が行われてきました。私は企業側と消費者側の両方から各国際航空連合の競争優位について研究しました。

競争優位の分析指標として、企業側には有償旅客キロ、有償座席利用率、乗客数を勘案した交通量、収益、そして二酸化炭素排出量のような環境に関するものも用い、消費者側には、点数化した感情やサービス満足度、さらにはCEOメッセージの効果から各国際航空連合の戦略的コミュニケーション品質も対象としました。

その結果、国際航空連合に参加している企業のほうが競争優位にあることが確認できました。その一方で、戦略的コミュニケーションの品質については、国際航空連合に参加していない企業の方が高い結果がでました。なお、コミュニケーションの品質については3つの国際航空連合間の比較分析の結果に大きな統計的な差はみられないものの、全般的にSky Teamやoneworldなど比較的メンバー数が少ない方が高いことが確認できました。

国際航空連合に参加することによってメンバー間が影響し合い、企業が競争優位になることはある程度推測できます。しかし、戦略的コミュニケーションについては、メンバーが増えると戦略目的や企業ステータスの違いなどから全体のマネジメントが難しくなり、参加していない企業の方が比較的に良く管理できていると解釈できます。

各国際航空連盟メンバのミッションステートメントの内容上の統計的相違

今後の研究について

マーケティングの分野は幅が広く、奥も深いです。今後も非営利組織のマーケティングの取り組み、中小企業のマーケティング戦略、消費者の潜在的ニーズを可視化するニューロ・マーケティングなど様々な研究テーマに挑戦していきたいと考えています。

長寿企業のミッションステートメントのワードクラウド分析結果

※掲載内容は全て取材当時(2023年3月)の情報です。