いじめを見た傍観者の反応からの考察
健康科学部 准教授 水野 君平(ミズノ クンペイ)先生
北海道大学大学院 教育学院 博士後期課程修了
博士(教育学)
専門分野:教育心理学
主要研究テーマ:思春期の学校適応・友人関係・いじめ
いじめの構造からいじめを考える
いじめは被害者にとっての権利を侵害するだけでなく、不登校やトラウマなどその後の人生を変えてしまうほど大きな影響を与えるものです。しかし、いじめはなかなかなくなりませんし、重大事態と呼ばれる深刻なケースも引き起こしてしまいます。いじめは決して許されることではありませんし、他者をいじめることが良いことだと考える人はごくわずかのはずです。ではなぜ、いじめはなかなかなくならないのでしょうか。さまざまな原因が多くの研究者によって考えられていますが、私はいじめの構造に着目しています。
いじめは被害者と加害者の間だけで起こるものではありません。見て見ぬふりをする人、煽る人、仲裁しようとする人など、周囲のさまざまな人たちの中でいじめは起こります。いじめ被害者・加害者の周囲の人たちのことは広く「傍観者」と呼ばれます。傍観者の役割が、いじめの生起や影響にとって重要であることが、これまでのさまざまな研究で明らかになっています。私は最近、傍観者がいじめを目撃した際の態度に着目して研究を進めています。
いじめは被害者と加害者の間だけで起こるものではありません。見て見ぬふりをする人、煽る人、仲裁しようとする人など、周囲のさまざまな人たちの中でいじめは起こります。いじめ被害者・加害者の周囲の人たちのことは広く「傍観者」と呼ばれます。傍観者の役割が、いじめの生起や影響にとって重要であることが、これまでのさまざまな研究で明らかになっています。私は最近、傍観者がいじめを目撃した際の態度に着目して研究を進めています。
傍観者の考え方に注目した研究
ある架空のいじめ事例を中学生に読んでもらい、その事例に対する感想を尋ねるアンケートをベースに実験を行いました。実験と表現したのは、事例の提示方法に実験的要素を取り入れているからです。アンケートは中学生をランダムに2つのグループに分けて実施。一方のグループには「事例の被害者はトラブルメーカーである」という情報を、他方のグループには「事例の被害者は平均的な生徒である」という2通りの情報を読んでもらった後に、同じ架空のいじめ事例を読んでもらいました。その結果、被害者はトラブルメーカーであると示された場合は、そうでない場合と比べて、そもそも事例をいじめだと捉えにくく、被害者にも落ち度があると感じ、いじめを仲裁しようと考えにくいことがわかりました。
本来いじめはどんな理由があっても許されることではなく、いじめていい理由は存在しないはずです。しかしこの実験から、傍観者は被害者がどのような人物かによって、いじめを目撃した際の反応が変わることがわかりました。いじめを目撃した際に被害者の良くないところに目が行ってしまうと、「いじめ被害者自己責任論」の考え方になってしまい、被害者に寄り添えなくなるということが示唆されました。
上記のような、良くないことをする人物に降りかかった災難に対して否定的な反応を示すことは、「公正世界信念」と呼ばれる一種の認知バイアスによる影響が考えられます。今後の研究では、傍観者がどのような認知バイアスを示すのか、どうすれば傍観者の認知バイアスを防ぐことができるのかについての探究を深めていきたいと考えています。
本来いじめはどんな理由があっても許されることではなく、いじめていい理由は存在しないはずです。しかしこの実験から、傍観者は被害者がどのような人物かによって、いじめを目撃した際の反応が変わることがわかりました。いじめを目撃した際に被害者の良くないところに目が行ってしまうと、「いじめ被害者自己責任論」の考え方になってしまい、被害者に寄り添えなくなるということが示唆されました。
上記のような、良くないことをする人物に降りかかった災難に対して否定的な反応を示すことは、「公正世界信念」と呼ばれる一種の認知バイアスによる影響が考えられます。今後の研究では、傍観者がどのような認知バイアスを示すのか、どうすれば傍観者の認知バイアスを防ぐことができるのかについての探究を深めていきたいと考えています。