1. ホーム
  2. 研究
  3. 研究クローズアップ
  4. 商学部 井奈波晃先生

商学部 井奈波晃先生

企業の活動を「お金」で表現する方法を考える

商学部 准教授 井奈波 晃(イナバ コウ)先生

中央大学大学院 商学研究科 商学専攻 博士後期課程修了
博士(会計学)
専門分野:会計学
主要研究テーマ:財務会計論、売却時価会計

会計学という学問

私は会計学のうち財務会計という分野で、測定に関する研究をしています。会計学、財務会計、測定について紹介します。

私は広島修道大学商学部経営学科に所属しています。商学部は、ビジネスについて教育・研究する学部です。扱う分野には、会計学をはじめとして、経営学、マーケティング、金融、流通などがあります。それらの中でも私が専門とする会計学は、企業などの経済活動をお金(貨幣額)などの数値で表現し、その企業などにかかわる人に役立つようにすることを考える学問です。会計学は、企業外部の利害関係者(株主、銀行など)に役立つことを考える財務会計と、企業内部の利害関係者(経営者、従業員など)に役立つことを考える管理会計にわけられます。私はこのうち、財務会計という分野の研究に取り組んでいます。

財務会計の役割と財務諸表

今日の経済社会では、株式会社がその中心として活躍しています。株式会社には、投資者、債権者、従業員、取引先などのさまざまな利害関係者が存在します。株式会社が営業活動を続けるためには、投資者に株式会社の情報を提供したり、債権者との利害を調整したりといったことが求められます。

そこで登場するのが財務会計です。財務会計では、利害関係者に対する情報提供や利害調整のために、財務諸表という書類を作成します。財務諸表はさまざまなものがありますが、代表的なものとして損益計算書と貸借対照表があげられます。損益計算書は、ある特定の期間における企業の儲け(利益)を明らかにする書面です。貸借対照表は、ある時点における企業の持ち物(資産・負債・純資産)を明らかにする表です。財務諸表が存在することで、株式会社は円滑な営業活動を遂行することができ、経済社会の発展につながります。

会計における測定

財務会計では、「財務諸表に表示する金額をいくらにするのか?」が重要な論点です。土地を例にあげると、現在の日本では「土地は買った時の金額で記録・表示する」という基準(ルール)になっています。しかし、土地の価格は日々変動しているので、今現在の価格が、過去に買った時の金額と同じとは限りません。現在の日本の基準では、100円で買った土地が10年経過して200円に値上がりしたとしても、貸借対照表には「土地100円」と表示されることになるのです。そこで財務会計の研究では、「財務諸表に表示すべき理想的な金額はいくらか?」を考えます。

資産を例にすると、現在の財務会計では、次のような考え方があるとされています。一つ目は、「資産を買った時の金額」です。二つ目は、「今、改めて同じ資産を買ったとした時の金額」です。三つ目は、「今、その資産を市場で売却したとした時の金額」です。四つ目は、「その資産を使用したときに、将来得られるであろう金額」です。財務会計では、これらの考え方のことを、「評価基準」とよびます。測定の研究では、主にこれらの評価基準について理論的に検討します。

会計基準と時価評価

現在、会計の基準は、国ごとに独自のものを作成・使用したり、国際的な機関により作成された統一基準を使用したりといった形で運用されています。そして、会計基準を作成する際の考え方として、先ほど三つ目に紹介した「今、その資産を市場で売却した時の金額」、いわゆる売却時価に対する関心が世界的に高まっています。すなわち、財務諸表のうち貸借対照表を作成するにあたり、資産・負債を売却時価で評価するという考え方が主流になってきているのです。

測定の研究と展望

会計の基準が変われば、それに従って作成される財務諸表の内容が変化し、その財務諸表に基づいて意思決定をする利害関係者の行動もまた変化すると考えられます。そこに私の関心があり、測定の研究を通じて、「どのような理論に基づいて基準を作成するべきか?」、「利害関係者にとって理想的な会計情報とは、どのようなものか?」といった問題について、学説や基準等を用いて明らかにすることを試みています。測定の研究により会計学の理論を構築することは、経済社会が発展するための土台になると考えています。