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商学部 中園宏幸先生

他者と連携した新たな価値の生み出し方

商学部准教授 中園 宏幸(なかぞの ひろゆき)先生

大阪大学 大学院経済学研究科 経営学系専攻 卒業
博士(商学)
専門分野:経営学
主要研究テーマ:オープン・イノベーションのマネジメント

オープンイノベーションが盛んな領域の一つ「人工知能」が作成したイラスト

イノベーションは、組織や企業、果ては社会に対してそれまでなかった新しい価値をもたらす重要なものです。しかし上手くマネジメントしなければ、イノベーションはイノベーションとして世の中に出ることなく霧散してしまいます。
古典的な逸話に、馬車のスピードを上げたいが、どうしたらよいのかと問いかける事例があります。このとき、我々のような凡人は、馬の数を増やすだとか、より足の速い馬を用意するだとか、もしくは車を軽量化しようかといったアイデアを想起します。それはきわめて妥当に思えます。しかし、もし、新しい技術である蒸気機関を用いてみるのはどうかというアイデアが出てきたらどうでしょう。これは思いのほか、困った発想だと捉えられるかもしれません。なぜなら、車を蒸気機関で動かすなど、誰も考えたことがなかったからです。さらに、そもそも「馬車のスピードを上げたい」という問題に直接答えていません。そうなると常識的な我々は「そんな空想はよいから真面目に考えてね」とアイデアを棄却するわけです。しかし冷静に考えると、「目的地への移動時間を短縮する」という意味では最も本質的なアイデアという見方もできるのです。
馬車の事例からわかるように、イノベーションのマネジメントが難しいのは、イノベーションそのものがイノベーションとして生まれ出てくる前段階ではどうなるのかがよくわからないからです。いまやっていることが、イノベーションになるかもしれないし、ならないかもしれない、不確実性があるのです。だからこそ、マネジメントが難しい。現代に生きる我々は、歴史的遺物ではありますが、蒸気機関車のスピードを知っています。しかし当時の人はそうではないのです。だからこそ、当時の人々が蒸気機関車のために資源配分をして開発を進めていこうというのはかなり難しい、不確実性を伴う判断になります。
私の研究は、イノベーションのなかのオープン・イノベーションになります。端的にいえば、自分たちだけでイノベーションを進めるのではなく、他者(企業を含む多様な組織)との連携によってイノベーションを推進しようとするものです。イノベーションのマネジメントはただでさえ難しいです。そこに、他者との連携が加わるためオープン・イノベーションはさらに難しいものになります。そんな難しいことは本来やらない方が良いのですが、自力のイノベーションはあらゆる面から限界を迎えつつあります。他者とやらざるを得ないので、なんとかして効果的にオープン・イノベーションを推進する道を探ることが求められます。オープン・イノベーションは、やるかやらないかの段階ではなく、どのように取り組むかの段階に入っているのです。では、どのようにすれば良いのか。ここが私の研究のポイントになります。

※掲載内容は全て取材当時(2023年3月)の情報です。