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2022年度入学式 学長告辞

学長告辞

新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。この晴れやかな日に広島修道大学の仲間としてみなさんを迎えられることは本当に大きな喜びです。また、これまで新入生のみなさんの成長を見守り、支えてこられたご臨席の保証人の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。そして、この入学式のライブ配信をご視聴いただいている関係の皆様におかれましても、画面を通してではありますが、一緒にお祝いできることをうれしく思います。

みなさんは今、ワクワクしているでしょうか。緊張しているでしょうか。実は私も、本日学長という職につきました。こうしてみなさんへお祝いの言葉を述べることが私の学長としての最初の大きな仕事です。新しく広島修道大学の仲間になるみなさんに何を伝えるべきか、何を伝えることができるか考えるとき、まだ会ったことのないみなさんの姿が心に浮かびました。

学部に入学した皆さんの中には、この2年間、高校での体育祭、文化祭、修学旅行、クラブ活動、大会参加など、もっと楽しみたかったな、こんなはずじゃなかったのに、どうして私たちが……という気持ちで過ごした人も多かったのではないでしょうか。休日に友人たちと街に繰り出し、大声で笑いあう日が何日あったでしょうか。これからどうなるのだろうと、一人家の中で不安をかかえ、もやもやとした気持ちに押しつぶされそうなときもあったのではないでしょうか。みなさんをとりまく経済変化の中で、大学進学をあきらめかけた人もいたかもしれません。

今日、ここに集っているみなさんは、そのような中でも、きっと未来には何か明るいことが待っているはずと自分を励まし、前を向いて歩んできたみなさんです。その努力に敬意を表するとともに、その未来の選択肢として、広島修道大学を選んでくれたということを、うれしく思っています。

さて、学部に入学する多くの新入生のみなさんに向けて、今日はもうひとつおめでとうとお伝えしなくてはなりません。今日の日を18歳、あるいは19歳で迎えたみなさんは、今日4月1日から新成人、法律上の大人です。日本において成人となる年齢の見直しが行われるのは約140年ぶり、明治時代以来となります。そうした意味でも、みなさんは歴史の流れの中で、大きな転換期に生きています。成人としての心構え、気をつけてもらいたいこともたくさんありますが、今日はまずそんなみなさんに1つの詩を紹介したいと思います。谷川俊太郎さんの「成人の日に」という詩です。
成人の日に 谷川俊太郎

人間とは常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉がしこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること
もしそうなら
私たちはみな
日々成人の日を生きている
完全な人間はどこにもいない
人間とは何かを知りつくしている者もいない
だからみな問いかけるのだ
人間とはいったい何かを
そしてみな答えているのだ
その問いに

毎日のささやかな行動で
人は人を傷つける
人は人を慰める
人は人を怖れ
人は人を求める

子どもとおとなの区別がどこにあるのか
子どもは生まれ出たそのときから小さなおとな
おとなは一生大きな子ども

どんな美しい記念の晴れ着も
どんな華やかなお祝いの花束も
それだけではきみをおとなにはしてくれない

他人のうちに自分と同じ美しさをみとめ
自分のうちに他人と同じ醜さをみとめ

でき上がったどんな権威にもしばられず
流れ動く多数の意見にまどわされず
とらわれぬ子どもの魂で
いまあるものを組み直しつくりかえる

それこそがおとなの始まり
永遠に終わらないおとなへの出発点
人間が人間になりつづけるための
苦しみと喜びの方法論だ
いろいろなメッセージが含まれた詩です。みなさんにはどのような言葉が印象に残りましたか。
ここにある「人間とは何か」を問うこと、それが大学での学び、そして大学を卒業しても生涯私たちが探求していく問いです。大学での勉強は、この先に受験が待っているわけではありません。自分の成長のための勉強です。自分の成長やよりよい社会にどう生かしていけるのかと考えながら学んでほしいと思います。
そして、大学での人との出会い、さまざまな考え方との出会いを大切にし、自分のキャパシティを広げてください。大学は高校までとは学生や教職員数の規模が違います。それだけ多様な考え方を持った人が集まっています。心より信頼できる人との出会いがあるかもしれません。反対に自分と全く考え方の違う人、理解できない人もいるでしょう。異なる考えを持つ人、異なる環境で育った人、自分にはない能力を持つ人と出会ったときは、自分の成長のチャンスです。完全に理解することはできなくても、その存在を受け入れる力をつけていってほしいと思います。
みなさん、広島修道大学で自分の成長を楽しんでください。1日1日を大切に生きていきましょう。苦しみながら喜びながら、ともに1歩1歩、大人に、人間になっていきましょう。
みなさんの成長を期待しています。そして私たち教職員一同、みなさんにとって本学での学びが充実し満足のいくものになるようその支援に努めることを誓い、告辞といたします。
2022年4月1日
広島修道大学・広島修道大学大学院
学長 矢野 泉