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2022年度英語英文学科ゼミ指導教員が推薦する卒業研究論文を選出しました

2022年度卒業生が執筆した卒業研究論文の中から、指導教員の推薦に基づいて論文を選出しました。「卒業研究」は英語英文学科の必修科目で、4年間の学びの集大成となります。選ばれたみなさま、おめでとうございます!

佐川ゼミ / 桝谷妃奈さん「『オセロー』における人間の二面性の考察——3人の人物の深層心理に着目して——」

要旨 シェイクスピアの四大悲劇の内の一つ『オセロー』に登場するオセロー、イアーゴー、デズデモーナの3人に焦点を当て、その性格の二面性についてテキストを綿密に読み込み、具体的な台詞を提示しながら論じている。人前での表の顔、内面感情、そして劇前半と後半での人間性の変化について、コンプレックス、嫉妬、そして階級制度といった要素を指摘し、興味深い考察を行っている。人間として性格の裏表を使い分けることや臨機応変にとる態度などは現代に生きる我々と少しも変わらない、という点に自身の結論を置いている。
指導教員からのコメント 人間の二面性ということをテーマにそれぞれの登場人物の本来の性格をよく読み取ったうえで、その変化を劇の進行とともに提示している。批評書に頼り、有名な台詞をただ列挙するのではなく、それも十分踏まえた上で、独自の感性で選び出した台詞を根拠として提示している点が最も優れている。論理展開にも無駄がなく、相当の時間をかけてテキストを読み込んだことが伝わる優秀な論文である。

塩田ゼミ / 舩本瞳葵さん 「先住民族迫害の歴史と今——ANNE WITH AN “E”から深堀していく」

要旨 カナダを代表する文学作品、Lucy Maud MontgomeryによるAnne of Green Gablesを原作とするNetflixシリーズドラマANNE WITH AN “E”を出発点として、先住民族(インディアン)迫害に焦点を当て、カナダの歴史と現在を深く堀り起こし、ドラマ打ち切りの背景に隠された諸問題を考察した。
指導教員からのコメント 文化的多様性を誇るカナダを舞台に、信頼、友情、成長が描かれるこの物語の背景に何があるのか、という疑問を、様々な資料にあたり、その歴史と現代的な問題の諸相について入念にまとめている。その一例として、「文化帝国主義」という視点から「先住民族迫害」という否定的な側面に焦点を当て、寄宿学校での教育と「同化政策」との関連に言及している。幼い頃から親しんでいたという本原作について、大学で学んだ知識を基に、その解釈を深めている。

石田ゼミ / 松村明矢さん 「イギリス英語にみられるRight-Dislocated Pronounとその機能について」

要旨 本論文は、イギリス英語の口語表現において、重要な特徴として指摘されているタグ (Tag) の中で「右方転位代名詞 (Right-dislocated Pronoun)」(以下ProTag)と呼ばれる現象(例:"That was a big store that." の2回目に出てくるthat、"I like Rihanna me."のmeなど)に注目し、Mycock (2017) による指摘および議論を中心としながら、その言語使用上の機能を整理したものである。
指導教員からのコメント ProTagは、主に会話において付加的に使うことによって、付加疑問のような働きを持つタグの一種であり、これまで、対人関係機能に関する社会言語学的研究以外ではほとんど注目されてこなかった。本研究はそのような中、Mycock (2017) や他の先行研究の指摘を踏まえ、ProTagの韻律や形式、およびその機能(代名詞として現れながらも、実際には具体的な指示機能を果たしていない点など)について丁寧にまとめている。現象自体は大変興味深いが、先行研究も少なく、その本質的な性質および機能が未知数である中、その解明に果敢に取り組んだ姿勢は高く評価できるものである。一方で、以下に挙げたような点が改善されれば、さらに良い卒業研究論文になるだろうと思われる((1)丁寧かつ十分な用語の説明、(2)当該現象が英国方言に顕著に見られる理由の考察、(3)他言語(日本語など)における類似現象との比較など)。

大澤ゼミ / 二川未来さん 「海外ドラマFriendsにおける登場人物の分析-隣接ペアの第2応答を中心に」

要旨 「役割語」の研究において日本語を扱ったものは多く存在するが、英語などの外国語を対象としたものは研究は多くない。本研究は海外ドラマFriendsを題材とした研究である。具体的には会話の隣接ペアに注目し、隣接ペアの第2応答としてふさわしくないものを抽出し、エピソード、登場人物、および第1応答の機能(質問、依頼、評価、挨拶、非難)ごとに分類して分析を行なった。その結果、エピソードの展開によってふさわしくない第2応答が増えるというわけではなく、むしろ登場人物の性格によってその割合が異なることが明らかになった。
指導教員からのコメント 隣接ペアに関連する文献だけではなく、ポライトネス理論に関連するものも読み込み先行研究を丁寧にまとめた上で分析を行なっています。エピソードの数が多いため、すべてを対象とした分析を行えていない点については改善の余地があると言えますが、それを補って余りある丁寧な量的・質的分析を行なっています。何よりも隣接ペアに着目した分析を行うことでキャラクターの特性を明らかにしようとした点に研究の独自性があります。

戸出ゼミ / 小西雄也さん 「高等学校外国語科「話すための思考」形成の適切な指導法—移動構文を中心に」

要旨 日本語では「トムは公園に走って行った」と言うところ、英語ではTom ran to the parkと言い、Tom went to the park by runningとは言わない。これは、日本語と英語では、全く同じ事態を観察してもその解釈の仕方が異なるという「話すための思考(thinking for speaking)」パタンの違いによるものである。目標言語の「話すための思考」を学習者が形成することができれば、母語に影響されない自然な目標言語を学習者は認識するだけでなく、発話することができる。本研究では、教師がどのような指導を通して、学習者に目標言語の「話すための思考」を身に付けさせるのかを研究した。特に、英語と日本語の思考パタンの違いの一例である「移動動詞」に焦点を当て、「話すための思考」形成の適切な指導法について議論し、効率的かつ有益な指導法を考察した。
指導教員からのコメント Slobin著の “Thinking for Speaking”という英語論文も含めて先行研究を丹念に読み込むという地道な研究態度に好感を持ちました。そして、英語の「話すための思考」を身につけさせるための指導を、「暗示的指導」「明示的指導」「英語のインプット」「日本語を用いた指導」という観点を結び付けて、理論に基づいた具体的な指導を考案した点が優れています。彼は4月から高校教員として英語を教えることになりますが、研究したことが英語指導の方向性を決める上でよい羅針盤となるでしょう。

Barrsゼミ / 楠啓史さん 「Translation Shift of there-Constructions in English-Japanese Simultaneous Interpreting」

要旨 This study used a corpus of simultaneous interpretation data to investigate how interpreters translated existential ‘there’ constructions from English into Japanese. The corpus was a collection of English-Japanese simultaneous interpretation texts, transcribed from a press conference held by the Japan National Press Club. The study found that whilst existential ‘there’ constructions are typically translated as "aru/iru" in the grammatical transliteration method, other translations can also be observed and these are examples of what is known as translational shift, as proposed by Catford (1965) over half a century ago.
指導教員からのコメント This research undertook a careful and thorough corpus-based approach to first of all identifying, then extracting, and finally analysing a range of English-Japanese translated sentences. A range of corpus software tools, such as AntConc and ELAN, were used to collect and interrogate examples of the existential use of ‘there’, with the researcher needing to make prudent decisions during the research process concerning not only the target structures to analyse, but also which approach to the analysis would yield the best results.