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2024年度学位授与式 学長告辞

学長告辞

 本日、学位記を授与された皆さん、ご卒業並びに大学院修了、おめでとうございます。保証人の皆様、関係の皆様も、卒業生の成長を支えながらこの日を迎えられ、たいへんお喜びのことと存じます。広島修道大学を代表して、心よりお祝い申し上げます。

 卒業生の皆さんが大学生活を過ごしてきた広島という街は、今、大きく変わろうとしています。その代表的なもののひとつは、広島市の玄関口である広島駅です。新しい駅ビルの建設が始まったのは2021年、多くの学部卒業生の皆さんが本学に入学した年です。通学途中、その変化をみつめ続けてきた人もいることでしょう。4年の歳月を経て、いよいよその新しい駅ビルが開業を迎えます。路面電車が駅前大橋を渡り、駅ビル2階へ直接乗り入れる特徴のある風景も姿を現しました。実際に路面電車がそこを走る姿、あるいはその路面電車に乗ることを想像しながら、変わりゆく広島に「わくわく」を感じている人も多いのではないでしょうか。
 
 その、広島という街は、今年、被爆80周年という一つの節目を迎えます。被爆者の皆さんと彼らを支えてきた人々は、この80年間、変わることなく核廃絶を訴え続けてきました。その思いが結実し、2021年には核兵器禁止条約が新たな国際法として発効しました。そして昨年、日本原水爆被害者団体協議会が、ノーベル平和賞を受賞しました。変わらずに続けることの大切さもここにあります。
 
 街は常に変化しており、街の姿に完成形はないとよく言われます。私たちは、今まさにその姿を目の当たりにしているという実感があります。しかし、その変化の中だからこそ、受け継がれているもの、変わらないものに気づくことがあります。風景が変わっても、変わらない「広島の本質」が私たちの周りにあることに気がつきます。変わることを受け入れながら、これからも「広島らしさ」のある街であることが大切だと感じています。
 人も同じです。人にも完成形はありません。卒業生の皆さんも、よりよい自分へと変化を続けながら、自分の本質をみつけ、大切にし、自分らしさを育んでほしいと思います。これから新たな道を歩む中で、決して変化を恐れることなく、変わっていく広島の街をみるような「わくわく」感をもって、自分自身が進化していくことを楽しんでほしいと思います。そして、皆さん自身が、街や社会に新しい変化をもたらす開拓者となっていくことを期待しています。
 そう期待する時、思い出すのが、皆さんの先輩である吉田拓郎さんの歌です。広島修道大学に名称変更する前の、広島商科大学時代の学生で、日本のシンガーソングライターの先駆者といわれています。ハーモニーロードに「今日までそして明日から」という歌碑があることを知っていると思います。この歌もぜひ卒業する皆さんにかみしめてもらいたい歌詞ですが、ここでは1970年のデビュー曲「イメージの詩」の一節を紹介します。
 
「古い船には新しい水夫が 乗り込んで行くだろう
古い船をいま 動かせるのは 古い水夫じゃないだろう
なぜなら古い船も 新しい船のように 新しい海へ出る
古い水夫は知っているのさ 新しい海のこわさを」
 
 時代背景から様々な解釈のある歌詞ですが、私は皆さんが生きていくこれからの時代を作ることができるのは、新しい変化を恐れない皆さん自身であるという応援歌として受け止めています。
 ふりかえれば、私たちの大学名である「修道」は、中国の儒教の言葉「人間にはそれぞれの天性がある。天性を伸ばすのが人間の道である。その道をしっかりとしたものに整えるのが教育である。」から生まれています。中国の儒教の重要な文献、四書の1つ「中庸」という古典の一節「天の命ずるこれを性といい、性に率うこれを道といい、道を修めるこれを教えという。」というものです。
 
 これが、今年創始300周年を迎える修道学園が、江戸時代から変わらず持ち続ける本質です。この修道という名のもとに、皆さんが自分の本質を忘れず、そして変化を恐れず歩んでいくことを願い、私の告辞とします。
2025年3月19日
広島修道大学学長 矢野 泉