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第38回初年次教育セミナーを開催しました

12月11日に青山学院大学の杉谷祐美子先生をお招きし、第38回初年次教育セミナーを開催しました。
今回は、「大学におけるカリキュラムマネジメントを踏まえた初年次教育と学習支援」というテーマで講演をしていただきました。杉谷先生は高等教育論、教育社会学をご専門としており、中央教育審議会、大学設置・学校法人審議会に関わった立場から質保証政策を概観し、その要ともなるカリキュラムの改革動向やカリキュラムマネジメントのポイントについてお話ししていただきました。
まず、中央教育審議会大学分科会質保証システム部会(2022)の「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」(審議まとめ)をもとに、質保証システムの改善・充実の方向性について概観しました。そして、大学の3つのポリシーに基づく学位プログラムの編成、学位プログラムを基礎とした内部質保証の取り組み、内部質保証を通じた教育研究活動の不断の見直しによって各大学が社会的ニーズに対応しながらも、多様で柔軟なカリキュラムの編成が求められている状況にあるということでした。

次に、大学のカリキュラムに関する政策の経緯について説明がありました。1940年~50年代の「制度化」、1960年~70年代の「弾力化」、1990年代の「自由化」を経て、2000年代以降は「体系化」を図ることが進められているということです。また近年では、カリキュラムは体系的でありながらも、横断的であり、断続的であり、組織的であり、開放的であり、 先導的であることが必要とされているということでした。
そして、文部科学省高等教育局大学教育・入試課学務係(2023)の「令和3年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」をもとにカリキュラム編成の現状について確認をし、各大学において取り組みが進んでいるものと進んでいないものがあることを押さえました。「能動的学修(アクティブ・ラーニング)を取り入れた授業を実際に行っている」では96.9%となっているものの、「日本学術会議が作成している分野別の教育課程編成上の参照基準を活用」では19.9%にとどまっています。杉谷先生は、活用できるものは活用したらよいと述べられていました。
カリキュラムマネジメントについては、カリキュラム上の連関性と関係者によるマネジメント上の協働性についてお話をされました。特に、カリキュラム上の連関性のためのツールとしてカリキュラムマップやカリキュラムツリー、ナンバリングなどを挙げられていましたが、むしろこれらのツールを作成するプロセスが重要であり、FD活動として位置付けることができるということでした。
 

 

 最後に、初年次教育については、2年次以降の教育への接続と学士課程教育における統合をいかに行うかが課題であると指摘されていました。今日の大学生は「あまり興味がなくても単位を楽に取れる授業がよい」や「大学での授業の方法は、大学の授業で指導を受けるのがよい」の割合が高まっており、大学生の「生徒化」が進んでいるということでした(ベネッセ教育総合研究所編 2022)。大学生の成長にとって何が重要かを考える必要があると述べられていました。

【参考文献】
・ベネッセ教育総合研究所編(2022)「第4回 大学生の学習・生活実態調査報告書【データ集】」https://berd.benesse.jp/koutou/research/detail1.php?id=5772(最終閲覧日2024112日)
・文部科学省高等教育局大学教育・入試課学務係(2023)「令和3年度の大学における教育内容等の改革状況について(概要)」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/1417336_00010.htm(最終閲覧日2024112日)
・中央教育審議会大学分科会質保証システム部会(2022)「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」(審議まとめ)https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1411360_00012.html(最終閲覧日2024112日)

今回の初年次教育セミナーを通して、社会が急速に変化する時代において大学の役割とは何かを考えながら、初年次教育や学士教育課程について検討していく必要があることが分かりました。(参加者教員8名、職員9名)