学長告辞
広島修道大学ならびに広島修道大学大学院に入学されたみなさん、誠におめでとうございます。また、新入生のみなさんの成長を見守り、支えてこられたご家族や関係の皆様にも、心からお喜びと、お祝いを申し上げます。
さて、私たちの大学名にある「修道」という言葉は、中国の儒教の重要な文献、四書の1つ「中庸」という古典の一節に由来しています。その一節とは、「天の命これを性といい、性にしたがうこれを道といい、道を修めるこれを教えという」というものです。少し難しく聞こえるかもしれませんが、これは「人間にはそれぞれの天性がある。天性を伸ばすのが人間の道である。その道をしっかりとしたものに整えるのが教育である」という、修道という学び舎の姿を示しています。天性とは、一人ひとりが天から授けられた性質です。つまり、「修道」という言葉は、学生のみなさん一人ひとりの個性を見い出し、それをしっかりと伸ばしていく教育ということを意味しています。
そして、みなさん一人ひとりの力を伸ばしていくための新しいカリキュラムが、今年度スタートします。まず、1年生から履修できる科目も多い全学共通科目があります。教養と総合的な判断力を培い、豊かな人間性を養っていくための土台を築く科目群です。そして、それぞれの学部で専門的な知識や技能をつけるための主専攻科目があり、入門的な科目から発展的な科目へと学びを深めていきます。そして自分の専門を超えてさらに幅広い学びにチャレンジしたい人のための修道スペシャルプログラム等が用意されています。
また本学では、学生全員が受けるアセスメント・テストというものを導入しています。これは、みなさんの自己分析のためのテストです。「テスト」となっていますが、このテストのためだけに何か特別な勉強をして、よいスコアをとってもあまり意味がありません。このテストはみなさんが毎年1回受けることができます。去年の自分と今年の自分を比べ、大学での学びや人との交流を通じて、どんな力が伸びたのか、どんなところをもう少し努力するとよいのか等、みなさん自身が自分や自分の成長を知る手助けになるものです。大いに活用してほしいと思います。
ところで、大学生活は多くの人、特に学生にとっては4年間という限られた時間となります。その限られた時間の中で、やりたいことや、やらなければならないことがたくさんあるでしょう。そんなとき、みなさんが気になるものの1つに、タイパがあるのではないでしょうか。タイパは、Time performance という和製英語からきているので、英語ではtime efficiencyといった方が通じるかもしれません。費やす時間に対しての生産性です。効率的にものごとをなしとげることはとてもよいことなので、ぜひ生産性を考えながら、いろいろなことに取り組んでほしいと思います。しかし一方で、タイパを意識し早く用件を片付けることだけに使ってしまった時間は実際何かを生み出したのか、タイパで大切なものまでをも省略していないか、時々立ち止まって考えてほしいと思います。一見、無駄な時間、意味のない時間と思われる時間にも、もしかしたら重要な意味があるかもしれません。一問一問問題を考えながら解くことによって自分に知識がついていく実感、試行錯誤することによってこれまで見えなかった視点から物事を考えることができた実感、時間効率だけでは語れないそうした体験ができるのも大学生活だと思っています。
「世の中の大事なことは、たいてい面倒くさい」
これは、昨年度、二度目のアカデミー賞を受賞したアニメーション監督宮崎駿さんの言葉です。宮崎さんはあるドキュメンタリー番組の中で、仕事中「面倒くさい」「本当に面倒くさい」を連発しながら、「面倒くさいという自分の気持ちとの戦いなんだよ」とつぶやきます。もしみなさんが面倒くさいと思う何かに直面したら、それは、みなさん自身が、心の中で何となくそのことが大切、あるいは乗り越えなくてはいけないと思っているからかもしれません。そして、そのとき私たちのとる行動は「面倒くさいからやらない」か「面倒くさいけれどやる」かの2つに1つです。どちらをとるか。私のお勧めは「面倒くさいけれどやる」むしろ「面倒くさいからやる」です。毎回でなくてもよいと思います。面倒くさいと思ったとき、3回に1回「面倒くさい」を引っ込めて、面倒くさいけれどやってみてください。「世の中の大事なことは、たいてい面倒くさい」という宮崎さんの言葉を思い出しながら、面倒くさくても大切なことに取り組んでいると思うことで、少し馬力が出てくるかもしれません。そしてそれをやり遂げた時、あるいはやり遂げられなくてもやり遂げようとした経験をした時、みなさんには必ず達成感という今日の日のような晴れやかな気持ちが訪れることでしょう。
キャンパス内の桜の花も、みなさんが広島修道大学の一員となることを心待ちにしていたかのように、美しく咲き誇っています。みなさん、広島修道大学で自分の成長を楽しんでください。1日1日を大切に生きていきましょう。みなさんの成長を期待しています。
本日は、本当におめでとうございます。
さて、私たちの大学名にある「修道」という言葉は、中国の儒教の重要な文献、四書の1つ「中庸」という古典の一節に由来しています。その一節とは、「天の命これを性といい、性にしたがうこれを道といい、道を修めるこれを教えという」というものです。少し難しく聞こえるかもしれませんが、これは「人間にはそれぞれの天性がある。天性を伸ばすのが人間の道である。その道をしっかりとしたものに整えるのが教育である」という、修道という学び舎の姿を示しています。天性とは、一人ひとりが天から授けられた性質です。つまり、「修道」という言葉は、学生のみなさん一人ひとりの個性を見い出し、それをしっかりと伸ばしていく教育ということを意味しています。
そして、みなさん一人ひとりの力を伸ばしていくための新しいカリキュラムが、今年度スタートします。まず、1年生から履修できる科目も多い全学共通科目があります。教養と総合的な判断力を培い、豊かな人間性を養っていくための土台を築く科目群です。そして、それぞれの学部で専門的な知識や技能をつけるための主専攻科目があり、入門的な科目から発展的な科目へと学びを深めていきます。そして自分の専門を超えてさらに幅広い学びにチャレンジしたい人のための修道スペシャルプログラム等が用意されています。
また本学では、学生全員が受けるアセスメント・テストというものを導入しています。これは、みなさんの自己分析のためのテストです。「テスト」となっていますが、このテストのためだけに何か特別な勉強をして、よいスコアをとってもあまり意味がありません。このテストはみなさんが毎年1回受けることができます。去年の自分と今年の自分を比べ、大学での学びや人との交流を通じて、どんな力が伸びたのか、どんなところをもう少し努力するとよいのか等、みなさん自身が自分や自分の成長を知る手助けになるものです。大いに活用してほしいと思います。
ところで、大学生活は多くの人、特に学生にとっては4年間という限られた時間となります。その限られた時間の中で、やりたいことや、やらなければならないことがたくさんあるでしょう。そんなとき、みなさんが気になるものの1つに、タイパがあるのではないでしょうか。タイパは、Time performance という和製英語からきているので、英語ではtime efficiencyといった方が通じるかもしれません。費やす時間に対しての生産性です。効率的にものごとをなしとげることはとてもよいことなので、ぜひ生産性を考えながら、いろいろなことに取り組んでほしいと思います。しかし一方で、タイパを意識し早く用件を片付けることだけに使ってしまった時間は実際何かを生み出したのか、タイパで大切なものまでをも省略していないか、時々立ち止まって考えてほしいと思います。一見、無駄な時間、意味のない時間と思われる時間にも、もしかしたら重要な意味があるかもしれません。一問一問問題を考えながら解くことによって自分に知識がついていく実感、試行錯誤することによってこれまで見えなかった視点から物事を考えることができた実感、時間効率だけでは語れないそうした体験ができるのも大学生活だと思っています。
「世の中の大事なことは、たいてい面倒くさい」
これは、昨年度、二度目のアカデミー賞を受賞したアニメーション監督宮崎駿さんの言葉です。宮崎さんはあるドキュメンタリー番組の中で、仕事中「面倒くさい」「本当に面倒くさい」を連発しながら、「面倒くさいという自分の気持ちとの戦いなんだよ」とつぶやきます。もしみなさんが面倒くさいと思う何かに直面したら、それは、みなさん自身が、心の中で何となくそのことが大切、あるいは乗り越えなくてはいけないと思っているからかもしれません。そして、そのとき私たちのとる行動は「面倒くさいからやらない」か「面倒くさいけれどやる」かの2つに1つです。どちらをとるか。私のお勧めは「面倒くさいけれどやる」むしろ「面倒くさいからやる」です。毎回でなくてもよいと思います。面倒くさいと思ったとき、3回に1回「面倒くさい」を引っ込めて、面倒くさいけれどやってみてください。「世の中の大事なことは、たいてい面倒くさい」という宮崎さんの言葉を思い出しながら、面倒くさくても大切なことに取り組んでいると思うことで、少し馬力が出てくるかもしれません。そしてそれをやり遂げた時、あるいはやり遂げられなくてもやり遂げようとした経験をした時、みなさんには必ず達成感という今日の日のような晴れやかな気持ちが訪れることでしょう。
キャンパス内の桜の花も、みなさんが広島修道大学の一員となることを心待ちにしていたかのように、美しく咲き誇っています。みなさん、広島修道大学で自分の成長を楽しんでください。1日1日を大切に生きていきましょう。みなさんの成長を期待しています。
本日は、本当におめでとうございます。
2024年4月2日
広島修道大学・広島修道大学大学院 学長 矢野 泉
広島修道大学・広島修道大学大学院 学長 矢野 泉