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2023年度入学式 学長告辞

 春らしい青空が広がるこの晴れやかな日に、広島修道大学の一員となられる、学部入学生、編入学生ならびに大学院に入学されたみなさん、まことにおめでとうございます。また、新入生のみなさんの成長を見守り、支えてこられたご家族や関係の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。

 この体育館で最後に新入生全員を集めて入学式を行ったのは2019年4月のことでした。それ以来、4年ぶりに、今、みんなが同じ場所に集い入学式を行うことができています。この間、新入生のみなさんは様々な葛藤と闘いながら過ごしてきたことでしょう。今日、ここに集っているみなさんは、そのような中でも、きっと未来には何か明るいことが待っていると自分を励まし、前を向いて歩んできたみなさんです。その努力に敬意を表するとともに、みなさんの未来の選択肢として、広島修道大学を選んでくれたということを、うれしく思っています。

 さて今日からみなさんが通う道、広島修道大学の正門からまっすぐ伸びる坂道は、ハーモニーロードと呼ばれています。今は新緑の美しいハーモニーロードですが、もう少しすると白やピンクのツツジの花が道を彩り、秋には黄金に輝く銀杏並木となります。ハーモニーロードをさらに上っていくと、修大池という小さな池があります。池の周りのソメイヨシノがみなさんの入学を祝うかのように満開を迎えています。今は修大池と呼ばれていますが、池の本当の名前は、桧(ひのき)に梅と書いて、桧梅(ひうめ)という名のため池です。大学がここに建設される前からこの場所にあった池で、広島修道大学の歴史を静かに見つめてきました。みなさんも広いキャンパスをいろいろめぐってみてください。きっとお気に入りの場所がみつかるはずです。

 1973年に発行された広島修道大学の大学案内の表紙には、このような言葉が書かれています。「すばらしい自然環境のなか/教員も職員も学生も/そこに「生きがい」を見つけうるような/「未来に生きる新しい大学」づくりをめざして……」。1973年は、本学が広島商科大学から広島修道大学に名称変更した年です。そして今年はそれからちょうど50年に当たります。50年間、今も昔も変わらないのは自然環境の美しさだけではなく、そこに「生きがい」を見つけうるような「未来に生きる新しい大学」を作っていこうという思いです。

 さらに、広島修道大学を設置する修道学園は2025年に創始300周年を迎えます。修道学園の源は江戸時代、広島藩の藩校にあります。江戸から明治へと大きく時代が動く中で修道という学び舎は生まれました。さらに、広島修道大学は、第2次世界大戦後、原爆の被害から復興する広島、経済成長する広島を引っ張っていく人材の育成が必要、という地域の要請によって生まれました。「修道」という名前には、大きな歴史の転換点において、常に新しい時代を切り拓いてきた歴史が刻まれています。
 伝統と未来志向の広島修道大学へ、ようこそ。広島修道大学を選んだみなさんの選択が間違っていないことを証明し、みなさんを立派な地球市民そして専門的人材として育てていく責任の重さと使命感を、今改めて感じています。

 ところで、みなさんは、武田綾乃さんという小説家を知っていますか。大学生の時に作家としてデビューされ、代表作に『響け!ユーフォニアム』という高校の吹奏楽部を舞台にした人気シリーズがあります。今日の入学式でも本学吹奏楽団が素晴らしい演奏を披露してくださっていますが、高校生たちの吹奏楽にかける情熱や葛藤を描いた作品です。コミカライズやアニメ化もされているので、小説は読んでいなくても、作品を知っている人は多いのではないでしょうか。その武田さんの作品に『世界が青くなったら』という小説があります。朝起きたとき大切な人が消えていて、もしあの時、別の決断をしていたら?もしもう会えない人に会うことができたら?を問う、一見ファンタジー系の恋愛小説なのですが、読み進めていくと、「選択」という言葉が大きなキーワードになっています。「選択」そのものとその選択をした自分、そして選択した後の自分について考えさせられる奥深い作品です。
 作者はインタビュー記事で、この作品のテーマとして、チャンスがあるならやってみようの精神を大切にしていると語っています。現代社会における無数の選択肢の中で、進学をする、しない、恋愛をする、しない、仕事はどうするかなど、選択することが多くて疲れすぎてしまうこと、そしてその選択の結果、何か失敗した場合に、自分が選ばなかった選択がとても魅力的に見えてしまい、それが生き辛さにつがなっているのではと指摘しています。しかし、実際は、何を選んでも成功する時はするし、しないときはしないといったように、自分が何かを選択することはできても、選択時にその結果は見えず、その結果を完全にコントロールできるわけではない。より大切なのは、選択の積み重ねそのものが人格を作っていくということである、ということを作品を通じて語られています。
大学では自ら何かを選択しなければならない機会が増えます。まずはどの授業をとるかもその機会です。選択の機会に直面したら、自分が成長するチャンスだととらえ、選択することを楽しんでほしいと思います。今、みなさんは広島修道大学への進学を選択したばかりですが、次の選択の機会で何を選ぶか、どんな選択肢を持つ自分になるかは、これからのみなさん次第です。そして、私たち教職員はみなさんがたくさんの選択肢を持てるよう、そして何を選んだとしても一人ひとりが自分の道をしっかりと歩んでいけるよう、教育の道を整え、みなさん一人ひとりに寄り添っていきます。

 今日、みなさんは、どのような気持ちでハーモニーロードを歩きましたか?緊張していた人もいたかもしれませんが、ワクワク感動するような気持ちが湧いてきていればいいなと思います。そして、そのワクワク感を忘れずに、広島修道大学で自分の成長を楽しんでください。ここでしか出会えない人たちと出会い、自分の進みたい道や自分自身をみつけられることを、心から願っています。
2023年4月1日
広島修道大学・広島修道大学大学院
学長 矢野 泉