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2022年度学位授与式 学長告辞

学長告辞

 本日、2019年度の入学式以来、初めてこの体育館に一同が会し、記念の式を執り行うこととなりました。新型コロナウイルスの感染拡大によって私たちを取り巻く環境が大きく変化する中、勉学に励み、様々な苦難を乗り越えてこの日を迎えた、学士号が授与される学部卒業生の皆さん、そして修士及び博士の学位を授与される大学院修了生の皆さん、誠におめでとうございます。広島修道大学を代表して、心からお祝い申し上げます。また、皆さんの成長を支えてこられた保証人の皆様、関係の皆様にも、お祝いと感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

 さて、学部卒業生の多くの皆さんが入学した2019年に、世界や日本でどのような出来事があったか覚えていますか。その年は、平成が終わり、令和が始まった年でした。スポーツ界では、日本でラグビーワールドカップが開催され、日本代表チームが初のベスト8入りを果たしました。バスケットボールの八村塁選手がNBAのドラフトで日本人初の1巡目指名を勝ち取る等、翌年に予定されていた東京オリンピックを前に、世界で活躍する選手がたくさん出てきました。一方で、アメリカ大リーグ、マリナーズのイチロー選手が現役引退を表明するといったできごともあり、スポーツ界でも時代の移り変わりを感じる年でした。

 そして、2019年の終わり、世界のあちこちで新型ウイルスの影響が出始め、時代が、世界が大きく変わっていきます。ちょうどその頃、私は研究のため東南アジアの農村に滞在していました。その国の中で感染者が確認され、たいへんな緊張の中、日本に帰国しましたが、日本ではまだ何の危機感もなく、テレビでも海外の新型肺炎のニュースとして小さく扱われている段階でした。それから約2週間後、日本でも感染者が確認され、有名人が亡くなる等して、国内に一気に緊張感が走ります。そして、2020年4月、最初の「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が政府から発出されました。そこから、私たちと新型コロナウイルスとの長い闘いが始まります。

 本当は、卒業式告辞として輝かしい言葉を並べ、皆さんを送り出したいと思っていましたが、皆さんが広島修道大学で過ごした日々の中で、新型コロナウイルスに翻弄された時間をなかったことにはできません。もっとクラブ活動や大会参加に全力で取組みたかった、留学を夢見ていた、いろいろなボランティア活動に参加してみたかった、ゼミコンパでゼミの友達や先生たちと仲良くなりたかった、友達と海外旅行をしたかった、大学生活をもっと、もっと楽しみたかった、こんなはずじゃなかった、どうして私たちが、、、という気持ちで過ごした人も多かったのではないでしょうか。周囲に感染者が出れば不安や苛立ちを感じ、自分が感染すれば罪悪感を覚え、ワクチンを打つべきかどうか、マスクを外してもいいのかどうか、今もさまざまな葛藤が続いています。

 苦しい日々ですが、みなさんに覚えておいてほしいのは、そのような時間をみんなで乗り越えながら、そして何より、皆さん自身が困難な状況の中で懸命に生き、今日の日を迎えているということです。

 暗闇の中でこそ、星が見える only when it is dark enough can you see the stars.
 キング牧師として知られるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア氏が1968年4月に行った、彼の生涯最後となってしまったスピーチの中の言葉です。光の中にいると、意識しなくても周りのものがそれなりにはっきり見えますが、十分暗くならないとみえないものがあります。星の輝きの美しさは暗闇の中でこそ、知ることができます。皆さんが広島修道大学でコロナと共に過ごした日々の中でみつけた大切なものは、明るい陽ざしの中では見つけることができなかった星の輝きです。それは、困難の中、共に支えあった仲間の存在の大切さかもしれません。外出自粛の中、勉強に集中し得た知識や資格かもしれません。感染が収まったときに今しかないと自ら行動を起こした勇気かもしれません。自分と向き合う時間がみつけた自分自身かもしれません。コロナ禍の中で見つけたそれぞれの星の輝きを見失わず、歩んでいってほしいと思います。

 広島修道大学を有する修道学園は約300年の歴史を歩んできました。修道学園の源は江戸時代、広島藩の藩校にあります。江戸時代から明治時代へと大きく時代が動く中で生まれた修道という学び舎。さらに、第2次世界大戦後、原爆の被害から復興する広島、経済成長する広島を支え導いていく人材の育成を、地域から要請される中で生まれた広島修道大学。「修道」という名前には、大きな歴史の転換点において、常に新しい時代を切り拓いてきた歴史が刻まれています。皆さんがこれから歩んでいく道には広島修道大学で学んだ仲間もたくさんいます。広島修道大学で学んだこと、つながった縁を大切にしてください。これからの時代を切り拓くパイオニアとして、みなさんが新たな舞台で活躍し、多くの人に愛されることを心より願います。
 
 ご卒業、おめでとうございます。
2023年3月23日 広島修道大学学長 矢野 泉