1. ホーム
  2. 人文学部
  3. 人文学部 NEWS
  4. 社会学科 学術講演会「過去は終わっていない—コザ暴動、BLMと日本をめぐる」を開催しました

社会学科 学術講演会「過去は終わっていない—コザ暴動、BLMと日本をめぐる」を開催しました

6月19日、「過去は終わっていない——コザ暴動、BLMと日本をめぐる」と題して、社会学科の学術講演会を開催しました。
コザXミクストピア研究室を運営し、沖縄キリスト教大学・沖縄国際大学で非常勤講師をされている池原エリコ氏を講師としてお迎えし、約90名が参加しました。
この講演では、1970年12月20日に沖縄のコザ(現在の沖縄市)で発生した「コザ暴動」を起点に、沖縄、アメリカ、そして日本社会の歴史的・空間的交錯について深い考察がなされました。

講演は、2020年に制作されたドキュメンタリー映像の上映から始まりました。この映像では、暴動発生当時の様子や記録映像とともに、50年後の現在に至るまで暴動の記憶を語り続ける当事者たちの声が、音声と映像という形でリアルに表現されており、聴衆に強い印象を与えました。文字による説明だけでは伝わりにくい、身体的な経験や情動までもがスクリーンを通して共有されました。

池原氏による講演では、この「暴動」が沖縄という一地域の出来事にとどまらず、日本全体、さらにはグローバルな文脈とも深く関係していることが指摘されました。暴動の背景には、戦後日本と沖縄における政治的・軍事的な構造があり、その構造は現在に至るまで持続しています。たとえば、現在も沖縄には多数の米軍基地が残されており、そこでは白人兵士だけでなく黒人兵士も生活している。そのような空間は、人種問題が潜在化/顕在化する場でもあります。

さらに、アメリカの黒人解放運動との交差も、講演の大きなテーマのひとつでした。沖縄の基地において、黒人兵士は被差別者である一方で、同時に沖縄の住民に対して加害的な存在ともなりうるという、複雑な加害/被害の構造が存在しています。こうした複雑な歴史と人種関係の交錯は、コザ暴動を単なるローカルな事件ではなく、広く空間的・歴史的・社会的な射程をもつ問題として捉えなおす視座を与えてくれます。

講演を通して、私たちは「過去」が単に時間的に過ぎ去ったものではなく、現在の社会構造や人々の記憶の中に生き続け、現在を規定し続けていることをあらためて認識させられました。コザ暴動という出来事を軸に、空間、人種、歴史、記憶といったテーマが交差するこの講演会は、過去と現在を結びつけ、未来に向けた問いを投げかける貴重な機会となりました。