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2023年度英語英文学科ゼミ指導教員が推薦する卒業研究論文を選出しました

2023年度卒業生が執筆した卒業研究論文の中から、指導教員の推薦に基づいて論文を選出しました。「卒業研究」は英語英文学科の必修科目で、4年間の学びの集大成となります。選ばれたみなさま、おめでとうございます!

Barrsゼミ / 古川 結菜さん / 「The Linguistic Landscape of Hiroshima's Peace Memorial Park」

要旨 This study examined the language on signs in Hiroshima's Peace Memorial Park in order to clarify the characteristics of the park's linguistic landscape. The research questions guiding the study were: which languages are used, how often are they used, and how can the signs be improved to better assist foreign tourists. For the research, photos of signboards around the park were classified into language types, according to the Japan Tourism Agency guidelines. The results of the analysis showed that many signboards were bilingual (Japanese and English), but less than half of the signs had information also in Korean and Chinese, suggesting that the addition of Chinese and Korean languages to the signs would be of valuable assistance to visitors from these neighbouring countries.
指導教員からのコメント The strength of this research is in its community-focused approach to investigating a language issue in an important tourist destination, and then suggesting improvements to the linguistic landscape of the destination. The research involved a comprehensive analysis of signs around the Peace Park, uncovering issues in the usage of language which have important implications for how the park is presented to foreign visitors.

佐川ゼミ / 津山 ミリさん /「シェイクスピアのイコノロジーについての研究」

要旨 イタリアの画家ブロンズィーノの「愛の寓意」からインスピレーションを得て、シェイクスピアの『冬物語』における時間の概念や、シチリアとボヘミア、冬と夏、生と死など作品の中に含まれる対比の概念をマニエリスムの絵画を元に考察している。
指導教員からのコメント シェイクスピア最晩年の作であるロマンス劇の傑作『冬物語』についての論考である。シェイクスピアがマニエリスム芸術の主題である「不均衡さ、分裂、人工性」を作中にちりばめた意図として、彼独特のルネサンス回帰という憧憬があると結論付けている。膨大な量の文献や美術資料の調査と検証に時間をかけた高いレベルの論文である。

塩田ゼミ / 岡田 隆成さん / 「日系アメリカ人農夫の遺産—Wisdom of the Last Farmerにおけるマスモトが受け継ぐ歴史の考察」

要旨 デイヴィッド・マス・マスモト(David Mas Masumoto, 1954-)の回想録であるWisdom of the Last Farmer(2010)についての論文。マスモトは、カリフォルニア州にある家族農園で桃と葡萄を栽培する日系アメリカ人三世の作家であり、論文ではマスモトの家系の熊本をルーツとする歴史を紐解きつつ、カリフォルニアの土地でマスモト家が受け継ぐ「遺産」について分析した。
指導教員からのコメント 日本では知られていない作家の翻訳されていない作品を丁寧に読み解き、様々な視点から作品を分析した。文学を出発点に、異なる学問領域を縦断する学際的な研究方法をとっており、特に「農業」について強い関心を寄せている点で意欲的な論文となっている。

石田ゼミ / 古川 太暉さん / 「英語の連結詞的知覚動詞に対する認知言語学的観点からの研究」

要旨 英語の連結詞的知覚動詞(Copulative Perception Verb)は、義務的に補語(形容詞など)を選択することが知られている(例:This flower smells sweet.)。本論文は、Taniguchi (1997) による分析・議論を基盤として、当該現象に関わる問題(①なぜ知覚対象が主語位置に生起するのか、②補部位置にはどのような種類の形容詞が生起するのか、③なぜ知覚経験者として話者あるいは総称的人称を含意するのか)に対して、具体的な言語データを詳細に記述・整理しながら、認知言語学および通時的観点から明らかにしている。
指導教員からのコメント 本論文は極めて優れている。まず、論文全体を通して、用語や現象に対する丁寧な説明およびデータの詳細な記述を行っている。また、Taniguchi (1997) の主張およびその根拠を整理しつつ、読み手が理解しやすいように配慮しながら論拠を明確にしている。研究において最も重要な「問うべき問い」をしっかりと立てた上で、自分の言葉(わかりやすい日本語)で説明しようとする姿勢が論文の随所に見られ、表記や体裁などの細かい部分までこだわっており、模範となるような卒業論文であると言える。

大澤ゼミ / 中佐古 健太さん / 「The Beatlesの訳詞比較に見る日英語の相違」

要旨 先行研究により明らかになっている日英語の相違が、The Beatlesの英語の歌詞と訳詞の間にも見られるかどうかについてThe Beatlesの13のアルバム(全161曲)を対象に調査を行った論文。先行研究をもとに日本語、英語の違いを、代名詞、語順、視点と表現、タイトルの4つの観点から分析した。コンコーダンサーを用いた分析を行った結果、日本語では代名詞の使用数が減少すること、日本語、英語とも文末に重要度の高い情報を置いていること、先行研究とは異なり英語で肯定文だったものは否定文になることは稀だったこと、日本語のタイトルは感覚体験的に曲の内容がわかりやすくなるように工夫されていること、などが明らかになった。
指導教員からのコメント 3年次からThe Beatlesの曲を研究対象にしたいという強い思いを持っており、4年生になってもその思いを持ち続けたまま研究を進めた。100曲を超える歌詞をすべて電子化し、電子化したものをAntConc、AntPConcなどのコンコーダンサーを用いて丁寧に分析を行っている。2言語を比較対象にするということで、電子化の作業には膨大な時間がかかったが、作業を終えた後の分析は比較的順調に進んだように思う。指導教員の助言の1つ1つを丁寧に理解し着実に作業を行なっており、The Beatlesの曲という限定されたテーマの中でも、非常に興味深い分析結果を導き出している。