
セソコマメイタボヤの水中写真。一つ一つの個虫*1は最大で1 cmほど。
本研究のポイント
- 沖縄県で発見されたホヤを新種Eusynstyela(ユースィンスティエラ) sesokoensis(セソコエンシス)(セソコマメイタボヤ)として命名した。
- クラウドファンディングのお礼として命名権を贈ったことから、一般の方が学名と和名をつけた。
概要
広島修道大学人間環境学部の長谷川尚弘助教は沖縄県に生息する群体性のホヤが新種であることを発見し、論文中でEusynstyela(ユースィンスティエラ) sesokoensis(セソコエンシス)という学名とセソコマメイタボヤという和名を提唱しました。新しい学名の種小名はセソコマメイタボヤが最初に見つかった瀬底島にちなんで、ラテン語で「瀬底の」を意味するsesokoensisから名付けられました。なお、本研究成果は2025年5月23日(金)に日本動物分類学会が発行する国際英文誌『Species Diversity』にオンライン掲載されました。
研究の背景
ホヤ類とは、尾索動物門ホヤ綱に属する動物の総称です。すべて海に生息しており、岩の上などから動くことがありません。世界から約3000種、日本から約300種が報告されています。この中で日本人に最も親しまれている種はマボヤでしょう。マボヤは北海道・東北地方で食用にされ、養殖もされています。そんなホヤ類ですが、地球上では亜熱帯域の海において多様性が高いことが知られています。日本では、沖縄県が亜熱帯域に位置していますが、沖縄県のホヤ類の多様性はまだまだ解明されていません。今回の研究成果は、沖縄本島周辺でのホヤ類の多様性を調査する過程で新種が見つかり、それをセソコマメイタボヤとして公表したことに関するものです。
研究成果
広島修道大学の長谷川尚弘助教は沖縄県の沖縄本島および瀬底島の沿岸域に生息する新種Eusynstyela(ユースィンスティエラ) sesokoensis(セソコエンシス)(セソコマメイタボヤ)を報告しました。
2018年から2023年にかけて、SCUBAダイビングを用いた調査によってセソコマメイタボヤの7群体が採集されました。これらの形態を詳細に観察したところ、世界から報告されているマメイタボヤ属の既知12種のいずれとも異なる特徴をもつことから未記載種(名前のついていない種)であることが明らかになりました。さらにDNAの情報を用いた系統解析の結果も本種がマメイタボヤ属に属することを裏付けました。
セソコマメイタボヤの命名には駆逐艦菊月会パトロネージュ部門(現・一般財団法人群青財団)*2が関わりました。この調査には、学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」を通じて集められた研究資金が用いられました。クラウドファンディングでは、個人が研究を応援するためにお金を払い、その金額に見合ったお礼を受け取ります。このお礼の一つに新種のホヤの命名権がありました。セソコマメイタボヤの命名にあたり、新種の命名に関わる学術的な手続き等について説明し、研究者と命名権取得者の間で協議を重ねました。その結果、本種の学名をマメイタボヤ属を表す属名Eusynstyelaと、セソコマメイタボヤが最初に見つかった瀬底島からラテン語で「瀬底の」を意味するsesokoensisからEusynstyela sesokoensisと命名しました。
2018年から2023年にかけて、SCUBAダイビングを用いた調査によってセソコマメイタボヤの7群体が採集されました。これらの形態を詳細に観察したところ、世界から報告されているマメイタボヤ属の既知12種のいずれとも異なる特徴をもつことから未記載種(名前のついていない種)であることが明らかになりました。さらにDNAの情報を用いた系統解析の結果も本種がマメイタボヤ属に属することを裏付けました。
セソコマメイタボヤの命名には駆逐艦菊月会パトロネージュ部門(現・一般財団法人群青財団)*2が関わりました。この調査には、学術系クラウドファンディングサイト「academist(アカデミスト)」を通じて集められた研究資金が用いられました。クラウドファンディングでは、個人が研究を応援するためにお金を払い、その金額に見合ったお礼を受け取ります。このお礼の一つに新種のホヤの命名権がありました。セソコマメイタボヤの命名にあたり、新種の命名に関わる学術的な手続き等について説明し、研究者と命名権取得者の間で協議を重ねました。その結果、本種の学名をマメイタボヤ属を表す属名Eusynstyelaと、セソコマメイタボヤが最初に見つかった瀬底島からラテン語で「瀬底の」を意味するsesokoensisからEusynstyela sesokoensisと命名しました。
今後の展開
本研究により沖縄県のホヤ類の多様性解明に一歩近づきました。その場所にどのような生物が生息しているかという情報は環境保全活動のための基盤データとなります。沖縄県の豊な海を将来に残していくためには、セソコマメイタボヤの発見のようにどのような生物が生息しているかを地道に調査していく必要があります。
論文情報
論文タイトル:Description of a New Species of Eusynstyela (Ascidiacea: Stolidobranchia) from Okinawa, Japan with Molecular Insight into Its Phylogenetic Position
著者名:長谷川尚弘(広島修道大学人間環境学部)
雑誌名:Species Diversity(動物分類学の専門誌)
論文URL:https://doi.org/10.12782/specdiv.30.99(外部リンク)
公表日:2025年5月23日(金)(オンライン公開)
著者名:長谷川尚弘(広島修道大学人間環境学部)
雑誌名:Species Diversity(動物分類学の専門誌)
論文URL:https://doi.org/10.12782/specdiv.30.99(外部リンク)
公表日:2025年5月23日(金)(オンライン公開)
注釈
*1群体生物を構成する最小単位。無性生殖で増えるクローンであり、すべての個虫は遺伝的に同一。個体のように振舞うが、個虫どうしは生きた組織で繋がっており、栄養のやりとりなどを行っている。
*2クラウドファンディングで出資に関わった駆逐艦菊月会のパトロネージュ部門は駆逐艦菊月会から分れ、一般財団法人群青財団に移行しているが、駆逐艦菊月会自体は存続している。
*2クラウドファンディングで出資に関わった駆逐艦菊月会のパトロネージュ部門は駆逐艦菊月会から分れ、一般財団法人群青財団に移行しているが、駆逐艦菊月会自体は存続している。