人間環境学部 岡西政典准教授 研究成果発表
本研究のポイント
- 包括的な標本データの整理:相模湾で2005年から2021年にかけて収集されたクモヒトデ類の標本696点を整理、108種を同定。
- 国際データベースへの公開:すべてのデータをGlobal Biodiversity Information Facility (GBIF) を通じて公開し、誰でもアクセス可能。
- 海洋環境指標としての価値:クモヒトデ類は分布範囲が広く、生態系の健康状態を示す指標として活用可能。
概要
本研究では、広島修道大学人間環境学部、東京大学大学院理学系研究科、東京都立大学都市環境科学研究科の研究チームが、相模湾で2005年から2021年にかけて収集されたクモヒトデ類(ウニやナマコの仲間の棘皮動物)の標本696点を整理し、108種に同定しました。標本は、採集地点や日付、深度などの詳細情報を含み、標準化された形式で公開されています。これらのデータは、海洋生態系の研究や環境指標としての活用が期待され、GBIFポータル*1を通じてオープンアクセスで提供されています。本研究は、継続的な標本収集が海洋生物多様性の理解に重要であることを強調し、標本に基づくデータの信頼性と拡張性を示すこととなります。また、本論文はオーシャンショット研究助成事業*2で助成を受けた「アジア太平洋生物多様性への全ゲノムアプローチ」の成果です。
本研究成果は2025年1月30日に日本生態学会Wileyの発行する国際誌『Ecological Research』で公開されました。
本研究成果は2025年1月30日に日本生態学会Wileyの発行する国際誌『Ecological Research』で公開されました。
発表論文タイトル
Specimen-based records and geographic locations of brittle stars (Echinodermata) collected from Sagami Bay
著者
Masanori Okanishi1, Hisanori Kohtsuka, Naohiro Hasegawa, Takeshi Osawa
雑誌
Ecological Research
DOI
研究の背景
地球表面の約70%を占める海洋は、人類の生存を支える重要な生態系です。しかし、その多様性や生態系機能に関する知見は未だ限られています。本研究は、標本に基づくデータの信頼性と再現性に注目し、相模湾を対象に16年間にわたる標本収集データを体系的に整理しました。クモヒトデ類は海底に多く生息し、環境変化への感度が高いことから、環境DNA解析など、環境学的研究において注目されています。
主な成果
- 種リストの作成:学名、採取位置、深度、収集方法などを網羅した詳細なデータセットを作成
- 国際的データ形式に準拠:標本情報はDarwin Core Archives形式に基づき、国際的な生物多様性研究に対応
- 標本の適切な管理と運用:標本は広島修道大学の研究チームの自然史コレクションとして適切に保存され、誰もが教育・研究に利用可能
今後の展開
本研究は、日本国内外の海洋生態系研究や環境モニタリングへの貢献が期待されます。特に、気候変動や海洋酸性化といった環境問題に対する影響評価において、今回公開したデータが重要な役割を果たします。また、データは教育・研究目的での幅広い利用が可能であり、海洋生物多様性のさらなる解明に寄与します。
今後、広島修道大学の研究チームは、他大学・博物館等の研究施設と協力しながら、このような自然史標本の収集・整理する研究活動を精力的・継続的に行うことで、環境問題解決に寄与する基盤データの拡充を図っていきます。
今後、広島修道大学の研究チームは、他大学・博物館等の研究施設と協力しながら、このような自然史標本の収集・整理する研究活動を精力的・継続的に行うことで、環境問題解決に寄与する基盤データの拡充を図っていきます。
用語解説
*1 GBIFポータル(地球規模生物多様性情報機構)…地球上のあらゆる種類の生物に関するデータを誰でも、どこにでも、オープンアクセスで提供することを目的として、世界中の政府から資金提供されて設置された国際的なネットワークであり、データ基盤(インフラ)のこと

*2オーシャンショット研究助成事業…ムーンショット型研究開発制度の海洋版として設立され、新たな海洋の生物種や生態、その機能の発見、海洋での発見を支援する新しいデータや技術の発見のための研究を大規模に支援するプログラム