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“イクメン昆虫”の意外な素顔?コオイムシの仔育て事情に新発見!

本研究のポイント

  • コオイムシのオスが背負う卵塊には、複数のメスが産卵した卵が含まれている
  • コオイムシのオスは、他オスの仔 (卵) の世話もしている
  • コオイムシのオスの中には、自分自身では卵の世話をせず、他のオスに自分の卵の世話を任せて子孫を残している個体がいる

研究内容

広島修道大学 (研究着手当時の所属:信州大学) の鈴木智也 助教、長崎大学の大庭伸也 准教授、信州大学の東城幸治 教授からなる研究グループは、「イクメン昆虫」として知られるコオイムシの仔育て行動に、これまで知られていなかった驚きの事実があることを明らかにしました。
コオイムシはその名の通り、オスが卵を背負い、孵化するまでオス単独で世話をするユニークな昆虫です。オスが単独で仔育てする動物は少なく、特に昆虫類では極めて稀な行動と言えます。また、大庭准教授による以前の研究によって、卵を世話しているオスがメスからパートナーとして選択されやすい、すなわち、「イクメンがモテる」ということが明らかになっていました。
コオイムシは1個体のオスが背負う卵の数が100個以上にも及ぶことがあり、これらの卵は複数のメスによって産卵されることが知られていましたが、本研究のDNAに基づく親子判定では最大で9個体のメスが1つの卵塊の形成に関与していることが確認されました。さらに、多くの卵を背負うことはオスの負担増加に繋がりますが、本研究によってオスが背負って世話をしている卵の中に、約35%もの割合で“自分の仔ではない”卵が混ざっていることが判明しました。これはつまり、オスが他のオスの仔 (卵) を知らずに世話しているということになります。一見、自分の精子によって受精していない卵を背負うことは、オスにとって不利益な行動と考えられますが、受精した卵とそうでない卵に関わらず、たくさん卵を背負うオスほどメスに配偶者として選ばれやすく、「イクメンがモテる」ことを通じて、結果的に多くの子孫を残していることも本研究の親子判定から明らかとなりました。
さらに興味深いことに、コオイムシのオスの中には、メスと交尾だけして自分では卵を背負わず、自分の精子によって受精した卵を他オスに世話してもらうことで子孫を残しているオスが存在することも明らかとなりました。
本研究は、父親が単独で仔育てを行うという繁殖行動の裏に、複雑で多様な繁殖戦略が隠れていることを示唆しています。今後、動物界におけるオスの仔育て行動の進化を考える上で、重要な成果といえます。

本研究成果は 2025年4月24日にオープンアクセスの国際誌『Ecology and Evolution』で公開されました。詳細は、添付の資料をご確認ください。

発表論文タイトル

Reproductive strategies in paternal care and remarkably low paternity level in a giant water bug 

著者

 広島修道大学 人間環境学部 (研究着手当時の所属:信州大学 理学部) 鈴木智也
長崎大学 人文社会科学域 (教育学系) 中等教育講座 理科専攻 大庭伸也
信州大学 学術研究院理学系 (理学部理学科生物学コース) 東城幸治

雑誌

 Ecology and Evolution

論文へのリンク(DOI)

研究助成

 1) 科学研究費助成事業
研究課題名:「父親が単独で仔育てを行う特殊な亜社会性システムの進化・維持機構の解明」
研究種目:基盤研究B
研究課題番号: 23K21332 (21H02550 ※2021~2023)
2) 科学研究費助成事業
事研究課題名:「コオイムシのユニークな繁殖生態の真髄に迫る日韓共同研究」
研究種目:国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
研究課題番号: 22KK0103

関連資料