12月10日、人文学部英語英文学科は、京都外国語大学名誉教授であり、『ウィズダム英和辞典』(三省堂)の編者でもある赤野一郎先生をお招きし、2025年度学術講演会「語彙力と辞書力を鍛える — 表現力の向上を目指して —」を開催しました。英語英文学科の学生を中心に、教職課程履修者や英語教育に関心をもつ学生・教職員、学外の参加者など、およそ70名が聴講しました。
講演の前半「語彙力編」では、単語を「いくつ知っているか」ではなく、「どのような関係性のネットワークとして捉えられているか」に焦点を当てる視点が示されました。赤野先生は、日常会話の大部分がごく限られた語彙で成り立っているコーパス分析の結果や、スティーブ・ジョブズのスピーチの語彙を題材に、「単語数の多さ」よりも「使い方の質」が表現力を左右することを、具体的なデータと例を交えながら解説されました。
あわせて、「バラバラに覚えた知識は力にならない」というメッセージのもと、単語を単独の知識としてではなく、他の語と結びつくコロケーション(語と語の相性)として捉える重要性が強調されました。日本語と英語のコロケーション問題を比較する演習では、学生たちが日本語では自然に使いこなしているコロケーション能力を、英語でも意識的に育てる必要があることが浮き彫りになりました。
後半の「辞書力編」では、紙の辞書と電子辞書・オンライン辞書それぞれの特徴に触れながら、「辞書は未知語の意味を調べる道具にとどまらない」という観点から話が展開しました。辞書を「引く」のではなく、「読む」ことによって、品詞や自動詞・他動詞の区別、コロケーション、文体ラベルなど、多様な情報を体系的に取り込めることが具体例とともに示されました。また、語を引く前に用法や品詞を予測する習慣を身につけることで、単語の意味だけでなく文全体の理解が深まることも紹介されました。
さらに、『ウィズダム英和辞典』の改訂過程を例に、コーパスに基づく語義・用例・コロケーションの見直しがどのように行われているのかが語られました。辞書の改訂は単なる「語の追加・削除」ではなく、社会・文化の変化や最新のコーパス分析を踏まえ、定義や用例を再設計していく営みであることが説明され、参加者は辞書の背後にある継続的な研究の蓄積に触れることができました。
講演の終盤では、「文法知識+語彙知識」に加えて、「コロケーション知識」を統合していくことが、英語で自分の考えを的確に表現する力につながることが強調されました。また、辞書やコーパスを活用し、自ら学び方を組み立てていく「自立した学習者」への一歩をどのように踏み出すかについても、具体的な参考文献の紹介を交えながら提案がなされました。
講演後のアンケートでは、「紙の辞書を積極的に使っていきたい」「電子辞書でも効率よく調べるために、自動詞・他動詞を意識して学習したい」「コロケーションを意識しながら辞書を“読む”習慣をつけたい」といった感想が多く寄せられました。これまでTOEIC対策として大量の単語暗記に取り組んできた学生からは、「日常会話の多くが約2,000語でカバーされることを知り、単語数を増やすよりも、同じ単語の“つながり”を増やしていきたいと感じた」との声も聞かれました。
一方で、「一語一語辞書を読むのは時間がかかるが、どの程度時間をかけるべきか悩ましい」「英語辞書を利用した学習法を、他言語(LOTE)にも応用できるのか」といった、今後の学び方をめぐる問いも挙がりました。また、紙の辞書の一覧性や偶然の発見の面白さを再確認した一方で、大学書庫に置かれた紙辞書のアクセスのしづらさや、今後の紙辞書のあり方について考えさせられたというコメントもありました。
今回の学術講演会を通じて、参加者は「語彙力」と「辞書力」を単なる試験対策のための能力としてではなく、英語で考え、表現し、他者とコミュニケーションするための基盤として捉え直す機会を得ました。英語英文学科では、今後もこうした学術講演会を通して、専門的知見に触れながら、学生一人ひとりの主体的な学びを支援していきます。
講演の前半「語彙力編」では、単語を「いくつ知っているか」ではなく、「どのような関係性のネットワークとして捉えられているか」に焦点を当てる視点が示されました。赤野先生は、日常会話の大部分がごく限られた語彙で成り立っているコーパス分析の結果や、スティーブ・ジョブズのスピーチの語彙を題材に、「単語数の多さ」よりも「使い方の質」が表現力を左右することを、具体的なデータと例を交えながら解説されました。
あわせて、「バラバラに覚えた知識は力にならない」というメッセージのもと、単語を単独の知識としてではなく、他の語と結びつくコロケーション(語と語の相性)として捉える重要性が強調されました。日本語と英語のコロケーション問題を比較する演習では、学生たちが日本語では自然に使いこなしているコロケーション能力を、英語でも意識的に育てる必要があることが浮き彫りになりました。
後半の「辞書力編」では、紙の辞書と電子辞書・オンライン辞書それぞれの特徴に触れながら、「辞書は未知語の意味を調べる道具にとどまらない」という観点から話が展開しました。辞書を「引く」のではなく、「読む」ことによって、品詞や自動詞・他動詞の区別、コロケーション、文体ラベルなど、多様な情報を体系的に取り込めることが具体例とともに示されました。また、語を引く前に用法や品詞を予測する習慣を身につけることで、単語の意味だけでなく文全体の理解が深まることも紹介されました。
さらに、『ウィズダム英和辞典』の改訂過程を例に、コーパスに基づく語義・用例・コロケーションの見直しがどのように行われているのかが語られました。辞書の改訂は単なる「語の追加・削除」ではなく、社会・文化の変化や最新のコーパス分析を踏まえ、定義や用例を再設計していく営みであることが説明され、参加者は辞書の背後にある継続的な研究の蓄積に触れることができました。
講演の終盤では、「文法知識+語彙知識」に加えて、「コロケーション知識」を統合していくことが、英語で自分の考えを的確に表現する力につながることが強調されました。また、辞書やコーパスを活用し、自ら学び方を組み立てていく「自立した学習者」への一歩をどのように踏み出すかについても、具体的な参考文献の紹介を交えながら提案がなされました。
講演後のアンケートでは、「紙の辞書を積極的に使っていきたい」「電子辞書でも効率よく調べるために、自動詞・他動詞を意識して学習したい」「コロケーションを意識しながら辞書を“読む”習慣をつけたい」といった感想が多く寄せられました。これまでTOEIC対策として大量の単語暗記に取り組んできた学生からは、「日常会話の多くが約2,000語でカバーされることを知り、単語数を増やすよりも、同じ単語の“つながり”を増やしていきたいと感じた」との声も聞かれました。
一方で、「一語一語辞書を読むのは時間がかかるが、どの程度時間をかけるべきか悩ましい」「英語辞書を利用した学習法を、他言語(LOTE)にも応用できるのか」といった、今後の学び方をめぐる問いも挙がりました。また、紙の辞書の一覧性や偶然の発見の面白さを再確認した一方で、大学書庫に置かれた紙辞書のアクセスのしづらさや、今後の紙辞書のあり方について考えさせられたというコメントもありました。
今回の学術講演会を通じて、参加者は「語彙力」と「辞書力」を単なる試験対策のための能力としてではなく、英語で考え、表現し、他者とコミュニケーションするための基盤として捉え直す機会を得ました。英語英文学科では、今後もこうした学術講演会を通して、専門的知見に触れながら、学生一人ひとりの主体的な学びを支援していきます。
講師略歴
赤野 一郎(あかの いちろう)
バーミンガム⼤学客員研究員、京都外国語⼤学名誉教授
専⾨分野:英語語法研究、英語辞書学、コーパス⾔語学
編著書 :『ウィズダム英和辞典』(三省堂)
『英語コーパス⾔語学ー基礎と実践』(研究社)
『コーパスと辞書』(ひつじ書房)
『英語教師のためのコーパス活⽤ガイド』(⼤修館書店)
バーミンガム⼤学客員研究員、京都外国語⼤学名誉教授
専⾨分野:英語語法研究、英語辞書学、コーパス⾔語学
編著書 :『ウィズダム英和辞典』(三省堂)
『英語コーパス⾔語学ー基礎と実践』(研究社)
『コーパスと辞書』(ひつじ書房)
『英語教師のためのコーパス活⽤ガイド』(⼤修館書店)