2023.03.27

  • 研究

地域社会の平和と安全と健康のために「美意識」を取り戻す

3:すべての人に健康と福祉を 16:平和と公正をすべての人に



 2020年、国連の人権機関(OHCHR)では「拷問等禁止条約」を背景として、拷問・虐待に関する意見募集が行われました。その結果、世界各地に蔓延する「ギャングストーキング」についての情報が多数寄せられ、精神上・身体上の深刻な被害の実態が浮かび上がってきました。「ギャングストーキング」とは、集団で一人の人間を対象に様々な嫌がらせを行う拷問・虐待的犯罪の一種で、「コミュニティーストーキング」「オーガナイズドストーキング」とも呼ばれます。その嫌がらせ行為は狭義のストーキングに収まらず多岐に渡るため、総称的に「targeted individual(標的にされた個人)」とも呼ばれます。最終的に被害者は死に至ることもあります。私はこの犯罪行為の抑止と被害者救済に資するという目的に向けて「プラクシスの美学」の視点から研究を行っています。私の研究の特徴は被害者側の視点に立つだけではなく、加担者側のマインドや社会への悪影響を焦点化する点にあります。それゆえ「targeted community(標的にされた地域社会)」および「危機管理としての人文学」という概念を提唱したいと考えています。
 ギャングストーキングの抑止と被害者救済を目指す本研究は、SDGsのうち特に16「平和と公正をすべての人に」という目標と関わります。2020年に国連の報告者は、世界的に蔓延する被害の深刻さを受け、その第16のアジェンダの中に報告の結論内容を反映させるよう具体的な提案を行いました。集団で個人を標的にするギャングストーキングは「誰一人取り残さない」というSDGsの誓いを真っ向から否定する犯罪に他なりません。広島に居を構える本学の教員としては、広島がこの犯罪に苦しむ世界の人々にとってのシェルター・シティ(shelter city)になることが平和都市広島の矜持を示すことにつながるだろうと考えます。

詳しくは、以下のリンク先をご覧ください。
【リンク】
「研究室の扉」(本学サイト)
 

商学部 教授
古川 裕朗
専門分野:美学、芸術文化学、哲学・倫理学  
主な研究テーマ:ドイツ近代美学および現象学的美学における自然享受と芸術創造の感性的・倫理的問題
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