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健康科学部 木本 晶子先生

研究室の扉

「分子栄養学」を語る

健康科学部 木本 晶子(きもと あきこ)先生

ようこそ、わたしの研究室へ

私の専門分野は調理学と分子栄養学です。調理学とは、その名の通り調理を科学と捉え、いつでも、何人分でもおいしい料理を作ることができるよう追究します。野菜の茹で方1つとってもそこには理論があり、その理論を実践することで知識や技術を身に着けることができます。
皆さんは「分子栄養学」という学問をご存知でしょうか。分子栄養学とは、栄養素や食品成分の生理作用について、分子レベル、遺伝子レベルで理解をはかる学問です。今回は分子栄養学に関する私の研究テーマである「適量のアルコール摂取がからだに及ぼす影響」についてご紹介します。

健康栄養学科の学生と(木本先生:中段右端)

研究内容

お酒が人体に及ぼす悪影響については誰でも知っているのではないでしょうか。その一方でお酒は百薬の長とも言われてきました。1981年に少量のアルコール摂取が死亡率を低下させるという疫学的な研究結果が報告され、その後、多くの疫学調査により、その効果が証明されてきました。しかしながら、動物実験による研究はほとんどないのが実情で、動物を用いて証明することを目的に研究を始めました。

がん細胞における免疫細胞の浸潤の様子

これまでに私が行った研究の一例として、老化促進モデルマウス※に対して行った研究結果を紹介します。老化促進モデルマウスには様々な系統があるのですが、一般的な老化を示すSAMP1というモデルマウスを用い、1%のエタノール水と2%のエタノール水、普通の水をそれぞれ1種類ずつ自由摂取させました。22週間自由摂取させた結果、1%のエタノール水を与えたマウスでは普通の水を摂取したグループと比較すると、老化の進行が遅くなり、2%のエタノール水では1%のエタノール水よりも老化の進行が早いことが分かりました。また、学習や記憶障害といった脳の老化が激しいSAMP8というモデルマウスや高脂肪食摂取ラットにも同様の実験を行ったところ、やはり1%のエタノール水のグループで最も脳疾患関係の抑制効果や肝機能の改善効果が認められました。これらの結果から、適量のアルコール摂取がマウスやラットのからだに良い影響を与えることが分かりました。
現在はガン転移モデルマウスを用いて、腫瘍の増殖とアルコールの関係を研究しており、0.5%~1%のアルコール摂取で腫瘍増殖が著しく抑えられるという結果を得ています。今後は、がん治療において注目されている、免疫チェック阻害薬とアルコールを併用した研究に取り組んでいきます。
研究は長期間に及ぶため、行き詰まったり、つらくなったりすることも多くあります。そんなとき研究から離れ、学生や異業種の人と話したり、趣味の時間を通して新たな興味や発想が生まれることがあります。

※老化促進モデルマウス:主に老年性疾患の研究に用いるマウス。促進老化・短寿命を示す系統(SAMP)と正常老化を示す系統(SAMR)が存在し、SAMPはさらに細分化され、学習・記憶障害、白内障等の老化関連病態を発症することが明らかになっている。

企業との共同開発

 次に研究以外の活動の一つ、地域の企業と連携した商品開発の取り組みについてご紹介します。

昨年度から、株式会社藤三とおにぎり・お惣菜・お弁当の商品開発に学生とともに携わっています。開発過程では、時間経過による食品の変色など、試作をする段階では分からない、教科書では学ぶことのできない発見がたくさんありました。今年は、更にからあげやお菓子の開発も携わっています。研究を通して地域に貢献できることは、私自身のモチベーションアップになり、なにより学生が商品開発について意見を活発に交換し合う姿に刺激を受けています。今年度からは、パレイヤ紀元株式会社とのお弁当開発にも携わっています。現在は月に2回、健康栄養学科の学生が考えたメニューを商品化し、店頭で販売しています。

普段から栄養学を学ぶ健康栄養学科の学生も、商品開発の経験は少ないため、栄養面にこだわりつつも売れる商品にするためにはどうすればよいか悩みながら挑戦しています。商品開発に携わるこのような機会は、学生にとってとても貴重な体験となっています。

株式会社藤三との共同開発の様子

株式会社藤三と共同開発したおにぎりは「お弁当・お惣菜大賞 2022」に入選

夢を見つけよう

学生がゼミを選ぶときに「なんで木本先生は学生時代にアルコールに関する研究テーマを選んだのですか?」と質問されることがあります。答えはお酒を飲むことが好きだから。「え?」と思うかも知れませんが、好きなことや興味のあることを研究することが大切だと思っています。
いま皆さんには夢がありますか?将来なりたい自分を実現するために今何をするべきか分かりますか?私が大学生の時は分かりませんでした。大学には入学したけれど特に目的はない方もいるかも知れません。大学には様々な専門分野をもつ先生方、そして多くの学生がいます。たくさんの人と出会い様々な経験をするなかで、やりたいこと、なりたい自分を一緒に見つけてみませんか?

プロフィール

健康科学部/ 木本 晶子(きもと あきこ)助教
広島大学大学院 生物圏科学研究科生物機能開発学専攻 修士課程修了 修士(農学)

▽専門分野
分子栄養学、調理学
▽主な研究テーマ
アルコール(発酵食品)が健康に及ぼす影響

※掲載内容は全て取材当時の情報です。