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人間環境学部 岩田 裕樹先生

研究室の扉

環境問題と経済学のつながり

人間環境学部 岩田 裕樹(いわた ひろき)先生

ようこそ、わたしの研究室へ

はじめまして。最初に私が専門とする領域についてお話をしたいと思います。私は、環境問題に経済学という学問領域からアプローチをする環境経済学を専門としています。経済学は社会科学の一分野であり、お金のことを考える学問?と思っている人も多いのではないでしょうか。
現在の環境問題は非常に多様ですが、例えば、地球温暖化問題や、プラスチックごみの問題、有害化学物質の問題などを考えると、環境問題は経済学というよりも、むしろ、工学的なテクノロジーのような理系的知見により解決される問題と思われるかもしれません。環境問題の解決には理系的知見が重要であることは間違いありませんが、同時に、そうした知見がうまく機能するような仕組みが考えられる必要があります。例として、企業活動を考えてみます。企業が商品を生産する際に用いる設備において、従来よりも環境汚染を大きく削減できる技術が存在したとしましょう。しかし、仮にそうした技術が存在していても、その技術を導入する費用がとても高い場合、この技術が企業に導入されるかというと必ずしもそうとは限りません。これは、環境問題の解決が企業行動のような経済活動と関わっていることを意味します。また、我々の消費行動を考えても、商品を購入する際に、高い環境配慮性能を持つ商品を常に選択するかというと、これも必ずしもそうとは言えないでしょう。つまり、我々は環境問題という社会的に重大な課題があるとしても、その解決に繋がる行動を選択するとは限らないのです。
こうした現実下にあって、人や組織がどのような目的を持ち、どのように選択・行動をし、その結果、どのような状況が生じるのかを分析する仕組みを持つ経済学は、環境問題を解決するための有効な手段を提供しうると考えています。

研究について

私の研究は、環境問題と企業活動に関連するものです。現在の社会には、多くの環境問題が存在しています。代表的なものとしては、地球温暖化問題が挙げられるでしょうか。地球温暖化問題は世界的に危惧されており、温室効果ガスの削減は我々の社会にとって重要な課題となっています。日本でも2050年までに温室効果ガスの排出を実質0にする、いわゆるカーボンニュートラルを目指した取り組みが始まっていることを見聞きしたことがあるかもしれません。こうした状況において、企業活動にも環境配慮が期待されています。この際に考慮されなくてはならないのは、企業の利潤追求と環境配慮がどのような関係にあるのかという問題です。社会的課題である環境問題の解決は我々の生活にとって非常に重要です。しかし、環境問題が解決すればそれだけで良いのかというと必ずしもそうとは限りません。仮に、環境問題への取り組みを行った結果、経済に大きなマイナスの影響が生じてしまうと、環境問題は解決したけれど、同時に人々の生活はとても貧しくなってしまいます。こうした状態は社会にとって本当に望ましいのでしょうか?より望ましいのは、環境問題が解決し、同時に人々の生活が豊かになる状況ではないでしょうか。そうした考えに基づき、「環境と経済の両立」を実現するメカニズムはどのようなものかについて研究を行っています。また、この内容に関連しますが、環境問題の解決には前述したように技術が必要となります。企業が環境問題を大きく改善するような革新的な技術を開発・導入すること、いわゆるイノベーションの実現は社会的にも大変有意義なものであると考えられます。近年では、こうした領域についてグリーン・イノベーションという言葉も聞かれるようになりました。しかし、その実現には多くの課題があります。そもそも利潤を追求する主体である企業はこうしたイノベーションを実行する誘因を常に持つとは限りません。そのため、企業が利潤を追求する中で環境負荷削減に繋がるイノベーションを生み出す方向で努力するような仕組みはどのようなものであるか、という問題についても研究を行っています。

教育について

ゼミの風景

私が大学での講義において意識していることは、学生の関心を高めることと学生の自主性を尊重することです。環境問題を経済学という観点から考える場合、経済学という学問領域をある程度理解しなくてはなりません。しかし、経済学という枠組み自体が学生からすると少しイメージしにくいことがあります。これは、高校までの勉強で経済学を学んでいない学生が多くいますので当然のことです。そのため、講義では教科書的な内容を教えるだけでなく、それが現実問題とどのように繋がっているのかという点をできるだけ具体例を交えながら講義をするようにしています。同時に、学生に対しては出来る限り自主性を尊重するように努めています。大学での学問は、明確な正解が存在していないことが多々あります。そうした状況においては、強制的にやらされる勉強ではなく自らの関心に沿って自由な観点から学問を行うことが学生の積極的な学びに繋がり、学生の能力の向上に寄与すると考えているためです。私のゼミナールでは、環境問題と企業活動について学びますが、学生がテーマを自主的に選んで研究を行うようにしています。自らが選択したテーマに沿って学生自身が資料やデータを集め、そして、自分達で真剣に悩み、考えた成果をレポートにまとめていきます。こうした取り組みを通じて生み出された成果を見ることは、私自身にとっても多くの学びや刺激となっています。

プロフィール

人間環境学部/ 岩田 裕樹(いわた ひろき)教授
京都大学大学院 経済学研究科 単位取得退学 博士(経済学)

▽専門分野
環境経済学、環境政策、環境経営
▽主な研究テーマ
企業の自主的取り組み、環境配慮行動とイノベーション、地球温暖化問題

※掲載内容は全て取材当時の情報です。