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2020/12/11【学習支援】第71回 LSCドキュメンタリーアワーを開催しました

『朋の時間』と『普通に生きる』 -「母たちの季節」から「自立をめざして」へ-

 第71回目は、人文学部の堀田哲一郎先生による解説を交えながら、『朋の時間』と『普通に生きる』を視聴しました。最初に、堀田先生から日本における障がい者支援の歴史について説明がされました。戦後の障がい者福祉で先駆的な役割を果たした糸賀一雄にふれ、糸賀たちが設立した施設での取り組みの意義と限界を映画で描いた『夜明け前の子どもたち』の紹介があり、最近でも、その限界が別の映画や評論で指摘されていることが述べられました。

 広島に縁のある「朋」の組織と堀田先生との出会いのお話しや、堀田先生が2年前に横浜の「朋」の代表者である日浦美智江さんを本学学術講演会講師として招かれていたことが説明された後、『朋の時間』の視聴となりました。この作品は、1986年に横浜市において設立された重症心身障がい者通所施設「朋」について、それまで在宅か入所施設かという二者択一の選択肢しかなかった制度を、母親たちの熱意で切り開いていく親・支援者・当事者の地域相互の絆を描いた作品でした。『朋の時間』での「この子がいたからこんな人生しか送れなかった、ではなく、この子がいたからこそ、これほどの人生が送れたと言える人生を皆でつくろう」といった母親の力強いことばの紹介がありました。

 続く『普通に生きる』では、2004年に静岡県富士市において設立された「でらーと」という通所施設における親と子の「自立」に焦点が当てられ、親と子は一心同体という考えが当然ではなく、別々の人間であることが、「普通」であることを訴えた作品でした。また、映画の「絶対、私や正太郎より、姉さんが先に自立すると思っている」といったきょうだいのセリフを取り上げ、障がい者にとって自立とは、自分で何でもできるようになることではなく、ヘルパーと一緒に親離れすることを指していると述べられました。そして、障害の有無にかかわらず、「自立とは、依存先を増やすこと(熊谷晋一郎)」という言葉につながる取り組みであるという評価があり、二つの対照的なドキュメンタリーを比較しながら、障がい者支援の意義や動向を知ることができました。

 最後に質疑応答があり、海外における障がい者支援の現状や、学生に何を望むか、といった質問がありました。堀田先生は、日本の障がい者支援は海外と比べると遅れていることを指摘し、特別な隔離された環境をわざわざ設定して障がい者の発達を健常者が保障してあげるというような発想は、当事者が望んでいることではなく、健常者の側も、支援することに損得勘定がはたらくことなく、同じ社会のなかに生きていて、共に助け合うことが当たり前であるという意識をもてるような、競争のない、余裕のある社会にしていくことが望ましく、それが「普通」であるような社会であってほしいと話されました。

 参加者のアンケートでは、「重度障害のある方々が、どのように生活されているかをもっと知りたいと思いました」、「とても考えさせられる内容でした。多くの方にみていただいて、考えていただきたい内容でした」、「以前、施設にボランティアに行っていたので、改めて考える良い機会となりました」といった感想が寄せられました。また、図書館でも今回のテーマに関連した書籍が展示されていますので、ご覧になってください。

 さて、今年度のドキュメンタリー・アワーは今回が最後となります。コロナ禍の中、前期は開催できませんでしたが、何とか後期に開催にこぎつけることができました。講師を担当してくださった堀田先生、参加された学生・教職員の皆さまに心より御礼申し上げます。今後も学習支援センターでは充実した企画を提供していきますので、よろしくお願いいたします。

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