■■クがホワイトボードマーカーよりも割安だからかもしれない。黒板消しはチョークの粉を払えば繰り返し使えるのに対し、ホワイトボードイレイザーは消耗品なので、その出費を避けたいという事もあるかもしれない。■■私の担当科目には毎年度、出来るだけ、黒板ではなく、ホワイトボードを配備した教室を割り当ててもらうように大学に依頼している。それは、黒板という道具が、私の担当科目における漢字の「手書き」指導には適さないと思われるからである。■■基本的に、学習者は白い紙の上に黒い文字を「手書き」するのであるから、教員は白い物(例えばホワイトボード)の上に黒い文字を書くべきである。黒板に白いチョークで書かれた文字を学習者が見て、頭の中で白黒反転させて自分のノートに書く、という形では、学習者に余計なストレスがかかってしまう。■■現在、板書の道具として、必ずしも現行の形状のホワイトボードが最善とは思えないが、文字の白黒反転が無い分、黒板よりはずっと良いと私は考えている。■■その点、江戸時代に発達した寺子屋における、手習いの方法は、非常に合理的であったといえる。■寺子屋では、まず師匠が筆を用いて紙に「手本」の文字を書き、一人一人の寺子(学習者)に渡す。寺子はその「手本」を見ながら、自分の筆を用いて、自分の練習用紙に文字を書く。■つまり、寺子屋では、師匠が書いた「手本」を、師匠が用いたのと同じ道具を用いて寺子が再現する、という形をとっているのであり、そこには文字の白黒反転によるストレスは無い。■しかし私の授業では、江戸時代の寺子屋よりも大人数の学習者を同時に指導しなければならないため、学習者一人一人に対して、私が学習者と同じ道具を使って一々「手本」を「手書き」して渡す事ができない。■今の所、私の授業では、大量の文章が主に「明朝体」で印刷されている講義資料を配布し、学生にそれを読ませ、講義資料の中から、特に字形に注意するべき漢字をピックアップして、その漢字を、私がホワイトボードに黒いホワイトボードマーカーで大きく「手書き」して示す、という形をとっている。■《■8■》■筆で書いた文字の字形■― 28 ―
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