広島修道大学 教職課程年報第16号
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■《■2■》■大学生の教養醸成のための漢字読み書き学習■ ■私は本学で二十年以上、主に江戸時代の文学・文化に関する講義・演習を担当している。成績評価は、基本的に、筆記試験(期末試験や授業中に実施する小テスト)の得点に基づいて行う。筆記試験では、参照物不可とし、重要な人物・作品・文物などの名称や、研究用語・古語の語義などを問い、その答を解答用紙に「手書き」させている。■また、点数化はしていないが、毎回の授業の終盤に、本学様式の「出席カード」に学生各自の授業の感想などを「手書き」させ、回収している。■但し、新型コロナ禍の2020・2021年度は、私の担当する全科目において、講義録画を用いたオンデマンド型授業を行い、その二年間に限り、筆記試験をリモートで行った。すなわち、日時を定めて、本学の教学システムの添付ファイルで、問題用紙・解答用紙をデータの形で学生に提示し、解答用紙を各自で紙に印刷させ、そこに答を「手書き」させ、大学に郵送させた。■■つまり、私の担当科目においては、義務教育で学習する「常用漢字」の範疇に含まれない様々な漢字を、これまで一貫して(コロナ禍の時期も含めて)、積極的に学生に読ませたり書かせたりしてきた。■江戸時代の文学作品や文化史料の中に用いられている様々な漢字を、現代人が読み書きできたところで、その読み書きの力が、直ちに現代の社会生活の中で実利を産むというわけではない。それは私も承知である。■私は、「常用漢字」以外の様々な漢字の読み書き学習を、実用のためではなく、「異文化理解」のための学習として位置付けている。■■私が設定した、そのような漢字の読み書き学習の趣旨は、私の担当する全科目のシラバスの「学習の到達目標」の項に明記してある。今年度のシラバスから当該部分を次に引用する。■学習の到達目標(中略)■(2)「漢字を書く力」を維持・発達させる。■近年(個人差はあるが)学生の全体的傾向として、漢字を書く力が著しく低下している。パソコンに向かう時間が増え、文字を「手書き」する機会が減ったため― 20 ―

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