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フィリピン・セブ島の貧困救済プロジェクト

広島修道大学では、2021年度より、セブ島貧困層住民の栄養状態の改善を目的として活動する「フィリピン・セブ島の貧困救済プロジェクト」を実施しています。
ここでは、プロジェクトの概要や進捗状況等を随時更新していきます。

プロジェクト概要

 人文学部では、以前より、フィリピン・セブ島における貧困支援活動のため海外インターンシップを実施していました。本プロジェクトではその繋がりを生かし、現地で支援活動に携わるNPO法人と連携し、「セブ島貧困地区住民の栄養状態の改善」を目的に、大学の専門教育を最大限に生かした、学部を超え、国境を越えた国際支援を実現します。

貧困支援には様々な形態があります。募金や生活必需品の配布などによる緊急支援は、一時的に命をつなぐことはできますが、支援継続の難しさがあります。本プロジェクトでは、セブ島のNPO法人DAREDEMO HEROと連携し、長期的視点から社会的貧困問題の解決を目指す活動の一環として、生活の根幹を支える食の視点から「もの」だけではなく「知識」を提供する支援を実施します。

プロジェクトには、人文学部英語英文学科通訳コースの学生と健康科学部健康栄養学科栢下教授のゼミの学生が参加。現地の生活状況、栄養事情を調査し、健康栄養学科の学生が貧困層住民の栄養に対する考え方を改善するための方法を提案します。通訳コースの学生は、言語の違いによるコミュニケーションの問題解決のため、ビデオ会議システムなどを使用し、リアルタイムで英語・日本語間のコミュニケーションを担当します。栄養学と通訳という全く異なる専門領域を重ねることで、普段のキャンパスでの学びを国際平和都市・広島から世界を変えるための力とし、人類共通の課題であるSDGsの達成に貢献していきます。

2021年度は現地のNPO法人等と協力して、現地の方への聞き取り調査や貧困層住民への支援物資送付等を行い、WHOやフィリピン政府などが公開している公的データなどを基に現地貧困層住民の栄養状態に関する仮説を形成しました。

2022年度活動内容

2年目となる2022年度は、セブ島の貧困層住民300世帯を対象とした大規模調査により、初年度に得た仮説の検証を行い、支援対象となる人々の実際の食事状況に関するデータを分析し、実効性のある栄養改善提案を策定することを目標に活動します。

2022年度プロジェクトの流れ

前期

表はスクロールすることができます。

実施時期 内容
4月14日 プロジェクト参加説明会。DAREDEMO HEROの団体理念と事業概要についての講義。今期の指針と目標についての説明。メンバー紹介。
4月~5月中旬 質問紙法と写真撮影法による食事調査の準備(質問紙の内容検討や翻訳 等)。
5月下旬 予備調査の実施。イナヤワンのゴミ山に住む人々への聞き取り調査。
5月下旬~6月上旬 予備調査に対するフィードバック共有。予備調査の結果精査・疑問点の整理。
6月上旬 現地調査員(ソーシャルワーカー)への質問会。質問会での回答を精査し、本調査の実行可能性を検証。
6月中旬 本調査開始。セブ都市部貧困層300世帯を対象とした食事調査。
6月下旬~7月中旬 カレッタ墓地に住む人々への実況による聞き取り調査。本調査の実施状況確認。
7月下旬 本調査の結果データ分析。
8月4日 中間報告会。現地ソーシャルワーカー、現地栄養士などを対象に調査結果報告。

後期

表はスクロールすることができます。

実施時期 内容
10月4日 後期第1回オンライン会合。
プロジェクト概要の共有。メンバー紹介。セブ医科大学からのメッセージ。
10月初旬~11月 データ分析と提案作成。
質問紙調査のデータ分析。食事調査データの整理と分析。栄養改善案の作成。
10月25日 後期第2回オンライン会合。
調査方法・データについての確認。問題点の共有と議論。
11月22日 オンライン成果発表会。
セブ島のホテル等に会場を設置し、現地関係者を招待。広島・セブ・ロンドンをオンラインで結び、今年度の調査結果を発表。
11月下旬~12月 振り返り。
データを整理し、現地にフィードバック。持続可能な栄養改善について考察。
1月~3月 次年度の準備。
栄養改善案及び調査方法の再考。

活動風景

プロジェクト説明会

4月14日、「フィリピン・セブ島の貧困救済プロジェクト」の2年目の活動が始まりました。
この日は2022年度のプロジェクト参加学生に向け、プロジェクトの概要やフィリピン・セブ島の貧困層の置かれている状況についての説明がありました。

現地の食生活に関する予備調査

プロジェクトで作成した質問紙などの調査器具を使用し、現地の食生活に関する予備調査を開始しました。質問紙は、日本で使用されているものを基に、セブ島貧困層住民の生活や食事状況に合わせ作成しました。食事調査の方法は、独自に開発した写真撮影法によって行います。聞き取り調査は現地団体DAREDEMO HEROのソーシャルワーカーが担当し、ビサヤ語への翻訳は、セブ医科大学栄養学部の協力も得ています。予定よりも遅れましたが、今回は10世帯を対象とした調査を実施します。調査方法の実行可能性を検討し、その後、プロジェクトは本調査に移行します。

現地調査員(ソーシャルワーカー)への質問会

6月9日、セブ島から送られてきた予備調査のデータを確認し、適切な分析が可能かどうかを検証するための質問会を実施しました。質問は現地で調査に協力していただいているソーシャルワーカーの方々に答えていただきました。
今回の調査では、質問紙票の他、写真撮影法を採用しています。これは、調査対象者の食事内容をすべて把握するため、3日間の調査期間に食べたもの、飲んだものすべてを計量し、さらにその写真をすべて送ってもらうことで、栄養価計算をする方法です。セブから送られてきた写真の内容を検討した結果、栄養価を計算するうえでいくつかの問題があることが分かり、解決策を現在検討中です。通訳コース生には、今回、初めてオンライン通訳を体験したメンバーもいました。

〇学生の声
「意見交換によって、生活環境が異なる地域の食事内容を精査するために最適な手段を見出すことができ、充実した質問会でした。」(健康栄養学科栢下ゼミ 神庭、木村)
「初めてのオンライン会合参加で、これが現実のプロジェクトであることを実感しました」(英語英文学科通訳コース 川部)

現地聞き取り調査

6月30日、セブ市のゴミ埋立地、イナヤワン地区で暮らす人々への聞き取り調査を実施しました。広島の教室とセブ島の現地をインターネット回線で接続し、現地の調査対象の方々にリアルタイムで質問しました。また、昨年、広島から送った支援物資のうちの一つ、レトルトの牛丼を現地の子どもたちに食べてもらいました。普段食べる機会のない日本食ということもありとても喜んでもらえました。

〇学生の声
「今回の調査では、食事状況の他、医療や日用品などの問題もわかりました。互いに笑いあって今は幸せだと答えてくれたことが印象に残っています。問題改善には子供達への十分な教育が必要であるという認識があることが分かり、自分達の活動により協力して生活環境の改善に取り組もうと思いました。」(健康栄養学科栢下ゼミ 萩原)

「現地のゴミ山と周辺の住環境をリアルタイムで観察し、インタビュー通訳を通して人々の暮らしや社会状況を知ったことで、より一層このプロジェクトを成功させたいという思いが強まりました。」(英語英文学科通訳コース 藤井)

第4回会合

7月21日、セブ市のカレッタ墓地で暮らす人々への聞き取り調査を実施しました。セブ市の富裕層は、一戸建ての家ほどの建物を一族の墓として建造します。貧困層の中には、その墓を住居とし、墓石の上で暮らす人々がいます。今回は、カレッタ墓地の人々に聞き取り調査を実施しました。昨年、広島から支援物資として送ったMCTオイルを、伝統的な現地料理であるチャンポラード(チョコレートで炊いたお粥)に混ぜ、試食してもらいました。 

〇学生の声
「お墓を住居としている方たちとのやり取りで大きな衝撃を受けました。質問に答えていただいた母親たちの楽しみや趣味は、住まわせてもらっているお墓の持ち主に対して感謝の念を表すための「墓掃除」だということです。現在の悪状況を打開するために必要な事は子供達への教育と仰っており、この発言には圧倒されました。」(健康栄養学科栢下ゼミ 木村、神庭、萩原)

「カレッタ墓地で暮らしている方々の実際の生活を中継で見る事ができてとても貴重な経験となりました。チャンポラードにMCTオイルを混ぜて、実食してもらった中で、味に変化を感じないという感想を聞いて少し驚きました。みんながおいしそうに食べている姿をみて、こちらまで嬉しく、温かい気持ちになりました。」(英語英文学科通訳コース 川崎)

前期最後のオンライン会合

8月4日、栢下ゼミの4年生にとっては、最後のオンライン会合を実施しました。今年度の前期の活動の締めくくりとして、これまでの活動のまとめと今後の方針を発表しました。現在、食事記録法(秤量記録法)と食物摂取頻度調査法(FFQs)という二つの方法で、現地の人々の食習慣と食事状況の調査を進めています。今回は、健康栄養学科の学生が自分たちの食事を振り返り、現実的な意義のある提案のために必要な要素について発表しました。

〇学生の声
「自分たちで栄養改善の提案を行うために、まずは自身の食生活の改善がどの程度なら簡単に支障なく実行できるのかなどを予め確かめてからセブ島の方たちへのアプローチを考えることが大事だということを改めて認識しました。これらのことを後輩たちにしっかり伝えていきます。」(健康栄養学科栢下ゼミ 倉本)

「健康栄養学科の栢下ゼミが作成したプレゼンテーションを通訳してDAREDEMO HEROの皆さんに伝える機会はとても緊張しましたが、大変いい経験になりました。また0から1を作り出すのは本当に大変であることを実感した会合でもありました。去年から始まったこのプロジェクトをより一層進展させていけるよう、問題解決の手助けをできるようにこれからも精一杯頑張ります。」(英語英文学科通訳コース 堀内)

後期のプロジェクト開始

10月4日、後期第1回目のオンライン会合を実施しました。今回からスタッフの一人がロンドンから参加するため、広島・セブ・ロンドンの3都市を結んでの会合となりました。健康栄養学科栢下ゼミのメンバー一新に伴い、改めて本プロジェクトの概要について、DAREDEMO HERO理事長の内山順子氏にお話を伺い、その後、栢下先生から現在の調査の課題についての説明がありました。また、現地調査に協力していただいているCDU(セブ医科大学)の実習生からのコメントをいただき、英語英文学科通訳コースの学生が通訳しました。

〇学生の声
「海を越えたスケールの大きいお話にワクワクしました。セブ島で同世代の学生が活躍されている姿にも刺激を受けました。これまで学んだ知識だけでは通用しないような気がしています。学生ならではの視点で役に立ちたいと思います。」(健康栄養学科栢下ゼミ 青木)

「セブ島の住民の動画を見て、自分たちの何気ない日常が当たり前ではないことを再認識しました。今後も様々な困難があると思いますが、メンバー全員が課題の解決に向けて知恵を絞って少しずつ前に進んでいきたいです。」(英語英文学科通訳コース 村岡)

成果発表会

11月22日、日比国際栄養カンファレンスに参加し、これまでの活動の成果を報告しました。
会議は、セブ市のホテル会場と本学の教室をオンラインで結び、ハイブリッド方式で行われました。セブ市の会場には、主催者である現地NPO法人DAREDEMO HEROのスタッフの他、今回の調査対象となった自治体の代表者、現地調査に協力していただいているセブ医科大学の研究者、フィリピン保健省のスタッフ、現地活動を資金面から援助している日本企業の代表者など、本プロジェクトの関係者が一堂に会しました。
健康栄養学科栢下ゼミの学生は、食習慣調査の結果と考察を発表し、通訳コースの学生は会議の内容を同時通訳しました。

〇学生の声
「今回の発表では、今までに得た食習慣についての情報をもとに改善策を提案しました。発表前は受け入れてもらえるか少し不安もありました。私たち3年生の活動開始は2022年の9月からですが、苦労しながらメンバーが一体となって取り組んでいるため、会議でセブ島の皆さんへ向けて発表できたことはとても達成感がありました。」(健康栄養学科栢下ゼミ 寺嶋)

「国際的なボランティア活動に興味があったので参加しました。本番まで先生や先輩方とオンラインで通訳の勉強会を重ねてはいましたが、とても緊張しました。当日は先輩方の通訳を間近に見て刺激を受けることが出来ましたし、大学生の私でも英語を使って人の役に立てると実感が出来た貴重な経験になりました。」(英語英文学科通訳コース 松村)

活動成果を発表する健康栄養学科の学生

同時通訳する通訳コースの学生

現地の様子