大学広報
University Public Relations

2017年作文コンテスト審査評

2017年作文コンテスト審査評

審査委員長  江種 則貴

今回の作文執筆を通じて、自分たちが暮らしている地域について学んだ皆さん。一人一人の作品を読み、それぞれ懸命に努力したことが手に取るように伝わってきました。
 思っていた以上にこの作文は難しかったと感じている人も多いことでしょう。まずは自分たちの地域の魅力は何なのかを発見しなければ、書き始めることもできません。都会にも地方にも、それぞれの良さがあると頭では分かっていても、いざ自分の日常を思うと不平不満が先に来る。私も皆さんの年頃はそうでした。
 そして、これだという魅力が見つかったとしても、それが他の地域に比べてどうなのかが、何ともつかみにくい。ましてや今回のテーマである「わたしのまちを世界とつなげる」やり方は、もっと悩ましい。果たして自分に何ができるのかと、ずいぶん自問自答を重ねたことでしょう。
 あれこれ思い悩んだ皆さんに、ここで一つの言葉を贈ります。英語の「unlearn」です。
 「learn」に「un」がかぶさるので、「学ぶ」の否定形、つまり「学ばない」という意味だと思うかもしれません。でも、全く違うのです。
 思想家の鶴見俊輔さんが若いころ、米国でヘレン・ケラーに出会いました。彼女は鶴見さんに、こう話しかけたそうです。「私は大学でたくさんのことを学びました。しかし、そのあと、たくさんのことを学びほぐさなければならなかったのです」
 この「学びほぐす」が「unlearn」です。鶴見さんは、しゃれた解説を加えます。
 すなわち、まず毛糸でセーターを型どおりに編むのが「learn」。それからセーターを全部ほどいて元の毛糸に戻し、自分の体に合わせて編み直していくのが「unlearn」だと。
 もちろん、まずは最初の学びが大切であることは言うまでもありません。いつもと変わらぬ日常に、あるいは見慣れた光景の中に、見えている気になっていたけれども本当は見えていなかった素晴らしさが隠れている。身の回りにはきっと、新たな発見があるはずです。
 中学生最優秀の宮永心さんはある日、お母さんがいつも歌ってくれていた子守唄がシューベルトの作品だったことを知りました。そして地元に伝わる子守唄、さらには音楽全般の持つ素晴らしさへと、発想はどんどん膨らんでいきます。その素直さが心に染みました。
 沖縄・国頭村の「やんばるの森」をアピールした高校生最優秀の前田壮哉さん。「自分達についてよく理解し、目の前の勉強に一生懸命に取り組むことで、私たち自身が世界と私たちのふるさとをつなぐ架け橋となるのではないかと考えます」と締めくくってくれました。
 さまざまな経験を重ねて自分を知り、世界の広さも知り、そうして足元の地域の良さを再認識していく。それこそが「古里を学びほぐす」ことだと思います。さらに付け加えるならば、伝えたい相手のことを考え、思いやることを忘れないでください。
 古里と世界をつなぐために、皆さんができることは無限に広がっています。学びほぐした後の実践に、大いに期待しています。