大学広報
University Public Relations

2017作文コンテスト入賞作品

僕たちの生活の向こう側のいのち

盈進中学校2年  岩藤 奨弥

 僕の住んでいる広島県福山市芦田町には市の運営管理による動物園がある。日本には89の動物園があるそうだが、この数字から考えてみても、自分の町内に動物園があるのは恵まれていることだと思う。学校行事や家族とのレジャーなど僕はこの動物園に幼い頃から何度も行く機会があった。小さいながらもアットホームなところが大好きな動物園だ。
 この動物園でライオンなどの猛獣と並んで人気があるのが、国内で一頭しか飼育されていないボルネオゾウの「ふくちゃん」だ。ボルネオ島で迷子になっていたところを保護され、それまでゾウのいなかった福山市動物園にやって来たそうだ。
 「ふくちゃん」の故郷ボルネオは世界で三番目に大きな島だが、パーム油を取るためのプランテーション化により森林が伐採され、2020年までには約六割の熱帯雨林が無くなってしまうと言われている。野生では約2000頭いると言われているボルネオゾウは生息地が奪われ絶滅危惧種に指定されている。
 そこで福山市動物園では「ふくちゃん」のエサやり体験等の費用を寄付し、ボルネオの森を買い取る「緑の回廊基金」という募金活動に長年取り組んでいる。これは保護区と保護区の間にある分断された熱帯雨林を買い取り、保護区と合わせて大きく長い緑の回廊を作ることで、野生動物の生活空間を確保するというプロジェクトだ。四年前、この活動によって購入された2.5ヘクタールの土地は「ふくちゃんの森」と名付けられている。
 そんな善意の取り組みが継続されている一方で、ボルネオにおいて悲しい出来事が起こった。ボルネオゾウが次々と大量死しているのが発見されたのだ。死因は消化管に重度の潰瘍と出血が見られたことから毒殺されたと考えられている。ボルネオゾウは世界最小のゾウとされ、気質も穏やかな生き物である。しかし、ボルネオでは商品作物のパーム油を食べる害獣と捉えられている一面もあるのだ。パーム油は洗剤や化粧品、食用調理用油、スナック菓子やアイスクリームにも使用される、僕たちの生活と切り離せない作物である。
 僕は、この時報道された写真の一枚を忘れることができない。毒殺された母ゾウにまだ小さな子ゾウが寄り添って離れない姿だ。人間本位の勝手な考え方で動物のいのちが脅かされていることに強い怒りを感じた。
 僕は「ふくちゃん」の存在によって、ボルネオゾウの置かれている環境を知り、人間と動物との共存について考えるきっかけをもらった。僕たちの生活の向こう側の世界に沢山の生き物のいのちがある。僕たちの生活が営まれているこの町のように、「ふくちゃん」の仲間の生きる町がある。そしてそれぞれの町で暮らす一つ一つのいのちの重さは等しい。僕の町の「ふくちゃん」が教えてくれたのは世界とつながり共に生きるためのヒントだ。