研究室の扉

佐々木先生

食と農の地理学
を語る

人間環境学部
佐々木 緑(ささき みどり)

ようこそ、わたしの研究室へ

皆さん、地理は好きですか。こう問われると、旅行は好きだけれど科目としての地理は苦手だと答える人は多いと思います。それは高校までの地理では必然的に暗記が多くなるからです。では、こちらの写真をみてください。これは9月にアメリカロサンゼルス郊外で、ナッツとワイン用ブドウ栽培の一大産地を撮影したものです。皆さんは写真からこの地域の農業の特徴を読み取れますか。
これは少々、地理学的な見方を学ばないと難しい問題だったかもしれません。写真奥に見える山肌をみてください。もともと乾燥地域で山肌には植生がほとんどないことがわかります。つまり、そのような地域にもかかわらずこれだけ大規模な農業が行われているということは、人工的に大量の水をどこからか引いてきているということが推測できます。地理学とは元来、「地」の「理(ことわり)」を追求する学問で、地表面に存在する事象の「なぜ」や「どうして」を解明するものなのです。1枚の写真から地域の姿を探ることができると思えば、地理学を少し面白いものに感じませんか。

[研究]
持続可能な農業のあり方

私の専門分野は、環境地理学、農業地理学です。大学院時代から持続可能な農業のあり方の模索を大テーマに掲げて研究をしています。常にいくつかの研究テーマが同時進行していますが、現在は大きく①大規模農業における環境問題、②社会情勢や政策によって影響を受ける農業生産・地域の動態、に関する研究をしています。
①の研究では、特に有機性廃棄物に着目しています。ここで研究例を一つあげてみます。日本一のエノキタケ産地である長野県中野市では、エノキタケ生産を行う際に生産量の約1.6倍(培地の配合による)の廃培地と呼ばれる廃棄物が排出されます。廃培地は、次の写真左のエノキタケをカットした後のものです。生産拡大に伴って増加するこれら廃培地をどのように処理するのか、その処理の変化と処理の空間的範囲を研究しています。エノキタケだけでなく、畜産など、特定部門に特化した農業経営で排出される有機性廃棄物の処理(静脈産業ともいう)に着目しています。
また、②では、東日本大震災以後の被災地の農業の動向や、TPP参加によるアメリカの米栽培の動向(アメリカは離脱を表明しましたが)などを研究しています。主なフィールドは、アメリカ合衆国と日本です。
これとは別に10年以上携わっている学際的な共同研究として、フードデザート研究があります。美味しそうなテーマのようですが、これは「食(フード)の砂漠(デザート)」問題のことで、一般的には「買い物難民」問題として知られています。これは社会的要請の非常に高い研究で、政府や自治体と連携しながら解決策を模索しています。

[教育]
好奇心と探求心

私が講義をする上で常に意識しているのは、学生の好奇心をいかに刺激するかということです。話が少しさかのぼりますが、私は学部2年生まで、砂漠などの乾燥地域の地質や水文学の研究に携わりたいと思っていました。しかし当時、カリキュラム上受講した農業地理学の講義でそれが一変したのです。講義の担当教員は、後に私の大学院の指導教官になる先生なのですが、とにかく授業の内容や教授法が斬新でした。

エクメーネ研究に掲載されたゼミ生の論文。

難しい理論を教科書通りに解説することは一切なく、ご自分が実際に研究で行った地域の写真やその際の状況を語りながら理解を促すというやり方でした。ご自分の経験や研究に基づいた講義を本当に楽しそうに展開する先生の講義に魅了され、気づいた時には農業地理学の面白さにはまっていました。こういう経緯もあり、講義では1人でも多くの学生に授業内容に興味を持ってもらうことを重視しています。それが、探求心へとつながるからです。
講義で地理に興味をもち、私のゼミに入ってきた学生には自分で研究テーマを決め、アポを取り、現地調査に行ってもらいます。ゼミ発表はもちろんのこと、しっかりと論文を書いてもらいます。ハードルは高いのですが、良い成果があり、やる気のある学生には、学術雑誌「エクメーネ研究」(環境地理学研究会発行)への投稿をすすめ、指導を行います(1名は掲載済み、もう1名は審査中)。このように学生の探求心を形にするサポートをしています。

プロフィール

人間環境学部/佐々木 緑(ささき みどり)

筑波大学大学院生命環境科学研究科博士課程修了

▽専門分野
環境地理学、農業地理学
▽専門分野
持続可能な農業のあり方の模索

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